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男勝り教習所✴︎東場学園7✴︎

写真部は普段の活動がない。年一の合宿に参加すれば単位が取れるとあってアンチ部活動の巣窟だった。(男子校との恋の)難しい押し引きに夢中な一発裏無し黒ギャル、クラスに何人か居る幸薄顔万年Cリーガー(当時)。気付けば写真部は40人を超える大所帯となっていた。

合宿は1泊2日避暑地にて班に分かれて観光し、撮影した中から1枚だけを学校で現像して提出するだけ。写真の良し悪しなんて顧問が分かる訳もなく提出すれば単位はもらえる、誤ロンでも倒牌すれば点棒が飛んでくるシステムだ。混一色は1・2年宝塚部の活動で忙しく、写真部の合宿には参加しなかった。引退公演がゴールデンウイークに行われたため、満を持して3年の夏に最初で最後の合宿に参加することになったのである。

部長が班決めをしてくれるのだが、私と混一色は同じグループになっていた。それは別に良い、問題は部屋割りである。例年通りでいくと、大概5~6人が一部屋で区切られているのだが、私と混一色が2人部屋と書かれたしおりが配られた。しかもそこだけ離れみたいになっていて何故か他の3年は全て大部屋。ギュッと布団を敷き詰めれば2人部屋を使わずに済むはずなのだが、清一色や三色階級のせいで詰められない。まるで健康麻雀店の卓位置だ。

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この時点でやっと内堀まで埋められていることを察した、点数が意外と近いのにラス前まで気付かなかったのだ。5桁目に惑わされて2万点差だと思ってたら51000点と39000点みたいな。ミーティング終わり、余ったしおりをまとめ部室を出ようとする最高位クラシック写真部長に思い切っていつもの宿舎と違くね?と問いかけてはみたが取りつく島もなかった。

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合宿当日。
混一色は華やかな宝塚部のメンバーなので、同じ班になった後輩はみんな喜んでいた。天気も良く道もすいていて絶好の写真撮影日和。だが私はそれどころじゃなかった。合宿の数日前、写真部のA子とB子が付き合っているという噂を耳にしたからだ。この学校特有の彼氏彼女の関係ではない、ガチの方である。先に断っておくが、私は男女の性に囚われない恋愛に偏見はない。ただ合宿のしおりにはA子とB子は別館の2人部屋の離れになっていた。ホンイツと泊まる予定のあの部屋だったのだ。合宿でイーピンとリャンゾウが交わるだと?いや待て、この場合イーピンとイーピンになるのか。・・・麻雀で表現するのはやめよう。とにかくそんな事を知ってしまったもんだからずっと気が気じゃなかった。こんなことなら保健の授業寝なきゃよかったと思ったが、当時同性者同士の対局は説明されてないだろう。中学生までコウノトリ説を信じていたツモのみがうまく立ち回れるはずがない。でも万が一のため知識だけは入れといた方がいいじゃないかと、当時最先端だったiモードを駆使してタチやらネコやらそれらしき用語を検索した。ヒットした女性同士の二次創作品は、コテコテのロリータさんが手を繋ぐとかキスするといった類のものばかりで核心を突くものは見つけられなかった。見上げた検索力である。これといった成果もなく後日膨大なパケット代の請求が親に届いた。

夕方、夕食を食べるため一度宿泊施設に戻った。だがどれだけ食べてもまともな味を感じない。一方混一色は隣で楽しそうに談笑している。こっちの気も知らないでのん気なもんだ。食事中も女同士は対局可能なのかとか、機能も問題だが心の方もどうなのかとか悶々としたまま箸を口に持っていく。食後大部屋でのトランプは全て同じ模様に見え、言うまでもなく大敗した。

夜になった。各自部屋に戻っていく。すれ違う面々が私の顔を見て、実力がどんなもんか計られているような気がした。次第に緊張もほぐれて慣れるのだろうか。というか慣れていいのだろうか。何も消化できぬまま部屋に戻ると、混一色は第一打を横に曲げてきた。

「シャワー浴びてきたら?」

なんて表現すればいいか、タンヤオも知らないズブの素人が初のテレビ対局で親からダブリーを受けたような気持ち…とでも言えようか。この後の手組は今もなお誰の戦術本にも載っていない。

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読んで頂き有難うございます。とっても嬉しいです★競技麻雀界で仕事をし続けたいので、拡散やサポート、応援宜しくお願いします!母ちゃんがんばります