2020年、シーズンが終わった
今年の試合シーズンが、全日本選手権の終了とともに幕を閉じた。
2020年2月。花園大学の発表会が観客を入れて行われたのを最後に、あらゆるイベント・試合が変更を余儀なくされた。男子新体操にかかわる人々は、コロナという得体の知れぬ敵と戦いながら、最善を尽くそうと奔走した一年だったに違いない。
ワールドワイドウェブ(www)の力
そのような状況で、これまでにはなかった形での演技の発表が行われた。祝陽平さんらが企画した「ONE」や、オンライン選手権。「ネット上で観客に新体操を見てもらう」というのが共通するコンセプトだ。
私はよく、「男子新体操」でSNS検索をする。悲しいかな、この言葉を話題にする人々はとても、とても少ない。Twitterのトレンドに入るなんて夢のまた夢。日本一を決めるジャパンでさえ、大手メディアの報道では、男子はテキストが1、2行のみだった。サンケイスポーツには男子の写真が2枚掲載されていたが、その写真を見て「男子新体操ってステキだなぁ、試合を見に行ってみようかなぁ」と思ってくれる奇特な人はいるだろうか。(いてくれたら嬉しいけれど…)
男子新体操を大衆に知ってもらう方法は、切り取られた断片が、大手メディアに掲載されるのを待つことではない。このスポーツの強みは、ルールを一つも知らなくても、なんの予備知識がなくても、演技の映像さえ見ればファンになってくれる人が必ずいる、ということだ。そして、大手メディアが男子新体操の団体演技を3分間放送してくれることは、ほぼない。ましてや個人演技を1分半放送してくれることは、絶望的なまでに、ない。
もう一度繰り返す。
演技の映像を見れば、ファンになってくれる人が必ずいる。
青大のBLUEの演技を見て、シルク・ドゥ・ソレイユからのスカウトが来た。鹿児島実業高校の演技により、認知度がアップした。井原高校の演技が世界中にファンを作った。これらの発信源はいずれもYouTubeである。
コロナ禍で影響を受けていない人はこの地球上にほとんどいないと思うが、そこで従来の発想に縛られて相対的な位置を下げていくか、工夫と努力によって上がっていくか、どちらを選びますか?という選択に、男子新体操もまた直面している。
試合のオンライン配信
男子新体操は、ONEやオンライン選手権によって、後者の道に舵取りしたように見えた。しかしファンにとっては残念なことに、ジャパンの映像は一般公開されなかった。そこに妥当な理由がある場合、ファンは文句を言わない。まっとうなファンは、自分の欲望よりも、この競技の発展と選手の幸せを願うものだからだ。ただ、「次回はこうして欲しい」「こうだったらいいな」という要望はあると思う。特に男子新体操のファンは、この競技がマイナーであることを悲しみ、もっと多くの人に知られるようになってほしいと心から純粋に応援し、だからこそこうあってほしい、と願う人が多いと思う。
ブラボー!得点表示システム
ジャパンで良かったことは、得点表示システムが提供されていたことだ。
これは本当に素晴らしくて、合計点だけではなく構成点・実施点・減点・そして順位がたちどころにわかるという、ファンにとっては感涙もののシステムだった。
今年度の全日本インカレでは、オンラインで映像がライブ配信された。これを実現してくれた学連のスタッフには本当に感謝したい。ただ惜しむらくは、得点がわからないことがしばしばあった。例えばサッカーや野球の中継を、現在の得点差がわからない状況で見なければならないとしたら、視聴者にとってはものすごいフラストレーションだろう。新体操も試合である以上、得点をタイムリーに知ることがとても大事だ。現地で試合観戦している場合でも得点板を見逃してイライラすることがあるが、今回のジャパンのような得点システムが提供されていれば、「○○選手のリング、何点だった?」「××選手の合計点が今○点だから、差は…」と忙しく手計算せずに済む。
「男子新体操の映像は見たことがある」という人の中にも、「試合観戦はスリリングで面白い」という事実を知らない人もいるのではないだろうか。コンマ何点かの差で勝敗が決まるあの興奮を、多くの人に味わってもらえたらと思う。
2020年の出来事の中で、悲しかったことはもう2度と起こりませんように。そして良かったことはこれからも続いていきますように。
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