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吉村龍二(よしむら・りゅうじ) 国士舘大学3年

男子新体操ファンで、吉村ブラザーズを知らない人は少ないと思うが、念のため紹介しておきたいと思う。

兄:吉村翔太(国士舘大卒・団体、2019社会人大会個人総合2位)

弟:吉村龍二(国士舘大3年・個人、2018年全日本インカレ個人総合9位)

ともに福井県の科学技術高校出身である。

兄・翔太は国士舘大学へ進学後、団体のかなめとして大活躍した。その美しい徒手は、今でも多くのファンが絶賛し、語り草となっている。今年のジャパンで彼が個人選手として演技した時も、現役時代を彷彿とさせる流麗な動きに、客席からはため息のような歓声がもれていた。

弟・龍二は、大学進学後、兄とは違う個人の道を選んだ。兄譲りの、と書くと失礼だろうか。(男子新体操を見ていると、DNAというのは本当に素晴らしい、と思うことがよくある)動きの美しさ、キレの良さ、筋の良さ、それらは間違いなく吉村兄弟が共通して持つ資質に違いない。それに加えて、個人選手としての吉村龍二だからこそ見えてきた、魅力がある。だが今は、それを書く時期ではないように思う。然るべき時が来るまで待ちたい。

吉村龍二選手が高校生だった頃のエピソードを一つ。ある大会で、私の隣で観戦していた女子高生(娘)が、彼のファンになった。「動きが綺麗」だと言う。そして「お顔がかわいい」と言う。男子新体操の大会ではよくあることだが、選手は試合が終わると、観客席の通路を普通に歩いている。当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、女子高生のファンにとっては非常に嬉しい瞬間である。

「あっ吉村君!!」(娘、固まる)

通路を歩きながら、チームメイトのスマホに向かい、ポーズをとる吉村選手。チームメイトは私たちのすぐ前に座っていたから、吉村君はこちらに向かって盛大に笑顔を披露してくれた形だった。

娘「かわいい…!!」(娘よ心臓は大丈夫か)

その時、私は思ったのだった。吉村君は、自分のファンがこの客席にいることなど、ましてや、すぐそばで自分の一挙手一投足に注目していることなど、想像もしていないのだろうなと。しかしそんな彼の屈託ない笑顔が、娘の1日をこの上なく幸せなものにしてくれた。吉村君、ありがとう(笑)

そして、こうも思った。「この選手が大学でも新体操を続けたら、娘のようなファンがもっともっと増えるに違いない」と。

フィギュアスケートや箱根駅伝などのアマチュアスポーツの例を見るまでもなく、「個々の選手にファンがつく」ということが、メジャーなスポーツには必ずある。もっと平たくいえば、あの選手がカッコいい、「キャー!」でいいと思うのだ。

「なんかよくわかんないけど、カッコいい」
「好きな選手がいるから、見る」

そんなファンを増やすことは、マイナーからメジャーへ変わる過程で必要な要因ではないかと、私は思っている。

さて、大学生になった吉村龍二選手の活躍ぶりを見てみよう。個人の演技については、動画をたくさんあげてあるので、是非そちらを堪能してほしい。

私が今日語りたかったことは、集団演技になると俄然輝きを増す、「eye-catcher 龍二」についてである。eye-catcherとは、「注目を引く人・物」という意味だ。国士舘大学男子新体操部が創作する集団演技は毎年完成度が高く、海外遠征などでも大人気を博している。今年の集団演技「Release〜あるべき本当の姿」を先日YouTubeで公開したが、これをぜひ、吉村選手中心に見てみてほしい。右足首にテーピングをしている、黒シャツの選手だ。

1:00 踏み切りと同時に背筋が弓なりに反り、頭が後ろに引かれ、到達点が高い跳躍。

1:51-53 マットからはける時のはけ方。右奥から右手前にはけてくる、そのはけ方を見てほしい。

3:18-23 国士舘名物、5連発タンブリングで、一番最後に着地するのが吉村龍二選手。その着地のしかたと、着地直後の動き。

4:45〜 画面中央で華麗に飛ぶのが村上選手だが、その少し前、右大臣左大臣のように肩上から側転する選手をよっこらしょと持ち上げた後、画面の一番左奥まで走りこんで斜前屈をしているのが吉村選手。その斜前屈が絶品である。

5:15 集団演技のラストでセンターに躍り出てポーズを決める吉村選手。

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細かいことを書き出してみて思った。

私がこんなことを書かずとも、ファンの人たちはもうとっくに彼の魅力に気づいているはずだ。

このノートを読んだ「応援!男子新体操」のカメラマン氏が、「僕も、吉村君は集団演技の中で動きが映えると思っていました」といって、わざわざ吉村君の場面だけを別角度で切り出してくれた。

吉村龍二選手。

今まさに硬いつぼみがゆるゆるとほどけ、花開く瞬間が間近であるように思われてならない。

どんな色の花だろうか。
どんな香りを放つだろうか。

まだ、誰も知らない。



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