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「これは、新体操じゃない」から2年半

note公式さんの「9月のオススメ10選」に、「名取高校 美しさは力だ」を選んでいただいた。

私はこのニュースを知った時、もちろんとても喜んだけれども、それと同時に「ほら、やっぱり!」という感があった。何が「ほら、やっぱり」なのかというと、「男子新体操は急速に世間に認知されつつある!」という「やっぱり」感なのだ。

「応援!男子新体操」は各種SNSで男子新体操の演技動画を発信するウェブメディアだが、その生命線はYouTubeである。Twitterやインスタは手軽で便利だが、2分20秒や1分では、3分の団体演技を分割しなければ掲載できない。そうなるとどうしても「YouTubeを見てほしい」となる。

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2年半ほど前、井原高校の団体演技がFacebookでバズり、1,600万回も再生されたことがあった。その時、最も多くの賛同を集めたコメントは「これは新体操じゃない」というものであった。その動画を掲載してくれたドイツ人の管理者が、「日本ではこれは新体操として認められていて、60年以上もの歴史を持ち…」と説明してくれたが、それでもネガティブな意見が相当数あった。もちろん、私も同様の説明を試みたが、焼け石に水、といった感がなくもなかった。

先週から、私たちのYouTubeアカウントにちょっとした異変が起きた。青森大学や井原高校、国士舘大学の団体演技が、アメリカ・ブラジル・メキシコ・フィリピンなどで多く見られ続け、日本での視聴回数を大きく上回った。

競技者数わずか2,000人ほどのマイナースポーツであり、実質的には日本にしか存在しないと言っていいこの競技の動画に世界中が驚愕し、コメントが何百も寄せられている。英語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語、そして絵文字で、世界中の人が感動の気持ちを表してくれている。そのほぼ100%が「大絶賛」と言っていい、手放しの誉めようである。特に井原高校に関しては、「本当に高校生なのか」という驚愕の声も多かった。

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「動きの連携がスムーズで、同時性が尋常じゃない」
「ほかの国も男子新体操を導入して、オリンピック種目にしよう」
「これが高校生って、ありえないでしょ?プロが最高の演技をしているようだ。信じられないくらい優雅だ」
「YouTubeがオススメしてきたんだけど、まいった、こりゃすごい」

しかし、ごくわずか(何百件もあるコメントの中の1つか2つ)ではあるが、一部否定的なコメントもあり、その中に「なぜ男子が女子のスポーツである新体操をやらなければならないのか」といったやや辛辣なものがあった。

今までならば、自分が「これは日本では…」と説明するところだが、このコメントに英語でいくつもコメントがついた。

「日本ではこれが新体操なんだ」
「個人では手具を持ってやっている」
等々、日本の男子新体操を知っていると思われるコメント。

「こんなに素晴らしいものを、別に男子がやったっていいでしょう。心をもっと広く持って、世界を見て」

という、寛容性と多様性を求めるもの。

私はこれらのコメントを見て、「私がいちいち説明しなくていい」という状況であることを理解した。わずか2年半で、状況は確実に変わっている。

YouTubeというバーチャルな世界であるかもしれないが、「演技動画」は、男子新体操を生で見られない場所にいる人に男子新体操を届けるための、とても効果的なツールだ。しかもYouTube村には国境がない。一つの大きな共同体がウェブ上に存在し、世界中の人々が動画を通して様々な価値観を共有する。

「これは新体操じゃない」と誰かが言う。

「これは日本では新体操なんです」と私が言う。

それは永遠に交わることのない平行線であって、不毛なやり取りとも言える。

「男子が新体操やったっていいじゃないか?」

「名前はなんでもいいけど、とにかく素敵よ!」

そんな意見が、その平行線の角度をほんのわずか、ずらしていくかもしれない。わずかな角度の修正は、遠い未来に2つの線が交わる可能性となる。


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