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【セミナーレポート】始めようドキュメンテーション

4/19(月)に開催したオンラインセミナーのレポートをお届けします!

今回のセミナーには全国各地の園から200名以上の先生方が参加してくださり、「ドキュメンテーション」への関心が高まっていることを感じました。
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。

ドキュメンテーションというと、なにか時間をかけて立派なものを作らなくてはならないというイメージがあるかもしれませんが、決してそうではありません。
ドキュメンテーションの目的は、子どもの姿や園の保育を「見える化」することですが、そのための手段はひとつではありません。
なにを、どのようなかたちで「見える化」し、どのように伝えていくのか。先生の負担を増やすことなく、保育を可視化していくためにはどうすればよいのか。
パネリストの先生方と一緒に考えました。

※こちらからセミナー動画をご覧いただけます。

パネリスト自己紹介

最初に、パネリストの先生方に「ドキュメンテーション」や「保育の見える化」について簡単にお話していただきました。

ふじ幼稚園  加藤積一 先生
数年前から、30秒程度の短い動画を日々保護者に共有しています。ドキュメンテーションはすぐにでも取り組んでいきたいと考えています。

聖愛幼稚園  野口 哲也 先生
現在、各クラスの担任の先生が週1回のペースで、写真2枚と文章200文字のおたよりを作成し、バスキャッチのシステムを使って保護者に配信しています。各担任は1人1台のiPodTochを持っていて、随時子どもたちの写真を撮影。GooglePhotoで保護者にも共有しています。

● あだちみどり幼稚園 大熊 啓太 先生
これまでは紙の園だよりで子どもの姿を写真や文章で伝えきました。紙のおたよりは情報量は多いものの保護者にとっては見づらい部分もあると思うので、今後は保護者が普段使用するスマートフォンで手軽に見られるようにしていきたいと考えています。ICTを活用すれば、先生の業務負担を減らすとともに、保護者にとっても情報が見やすくなるのではないかと感じています。

さみどり幼稚園 徳本達之 先生
早い段階から先生方は業務にパソコンを使用しています。ドキュメンテーションなどを通して保護者にわかりやすく情報を伝えることが重要だと感じています。

作りたくなるドキュメンテーション

続いてスマートエデュケーション池谷から、ドキュメンテーションの概要新たに開発した「おうちえんドキュメンテーション」について紹介しました。

ドキュメンテーションとは、子どもの遊びや生活の姿、そのなかでの育ちや学びを写真やエピソードを添えて伝える記録です。子どもの姿を可視化することで、保育内容を保護者に知ってもらうだけではなく、先生が他のクラスの先生と体験を共有することで、自分の保育を振り返ったり評価したりすることにもつながります。さまざまな対話が増えることで、保育の質を高められるという利点があります。

日本の保育現場では20年ほど前からドキュメンテーションを作成する試みがみられているものの、まだ普及にはいたっていません。しかし、最近ではドキュメンテーションに取り組む園が少しずつ増えており、インターネットで「ドキュメンテーション 保育」と検索すると、さまざまな園の事例を見ることができます。手描きだけではなく、パソコンを使って作成したり、デザイン性高く読みやすいかたちで編集している例もあります。なにか決まったやり方があるわけではなく、それぞれの園で工夫して保育を可視化しています。

ドキュメンテーション=紙というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、紙でなければならないというわけではありません。冒頭で、ふじ幼稚園 加藤先生がおっしゃっていたように、保育の様子を動画で保護者に伝える園も増えてきています。21世紀らしいICTという手段を活用し、より楽しく手軽に、そしてより深く伝わるドキュメンテーションツールを提供したいという思いから、スマートエデュケーションは神戸大学 北野幸子先生の研究グループと共同で「ICTとドキュメンテーションを活用した家庭との連携ツール」の開発・研究をスタートしました。

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「おうちえんドキュメンテーション」がもっとも大切にしているキーワードは「先生」です。先生に楽しく作っていただけるよう、さまざまなテンプレートを用意しています。また、スマートフォンやタブレットで簡単に作成できます。

作成したドキュメンテーションは、「おうちえん」や「バスキャッチ」、「園のホームページに貼り付ける」などして、保護者にスマートフォンで見てもらうことができます。保護者からのコメントを受け付けることも可能です。

「いきなり100点満点のドキュメンテーションを目指すのではなく、できることから始めることが重要です。最初は保護者には非公開で、先生同士の情報共有を目的に始めてみるのもよいかもしれません」と池谷は語りました。

バスキャッチとの連携

そして今回、「おうちえんドキュメンテーション」はVISH株式会社が開発・運営する園の業務支援サービス「バスキャッチ」と連携することになりました。

バスキャッチは、園バスの運行状況連絡、欠席・遅刻管理、おたよりのメール配信システムなどを備えた園の業務支援サービスです。VISH株式会社の西尾氏は、「バスキャッチのシステムを活用して園の業務を効率化するとともに、おうちえんドキュメンテーションを通して子どもと向き合う時間を充実させることができたら、先生もより保育を楽しむことができるのではないか」と語りました。

グループディスカッション

その後、参加者を4つのグループに分け、パネリストの先生を中心に「今後、、ドキュメンテーションに関してどんな取り組みをしてみたいか」などについてグループディスカッションを行いました。ディスカッション後には、それぞれのグループでどのような話が出たかを共有しました。

・ふじ幼稚園 加藤先生
ドキュメンテーションは、保護者にこどもが育つ様子を知ってもらい信頼感を得るためだけのものではなく、我々の仕事を社会に深く理解してもらう道具でもあります。多くの園が本格的にドキュメンテーションに取り組み、社会に発信していくことで、保育業界全体の質の向上にもつながるのではないかと期待しています。また、多くの園でペーパーレス化が進んでいることもわかりました。ICTの可能性も追求していきたいです。

・聖愛幼稚園 野口先生
ドキュメンテーション作成にあたって、職員の文章力をどう担保するかが課題として挙がりました。トレーニングなどで文章力を向上させていくのか、写真や動画をたくさん使うことで、短い文章で保護者に理解してもらうようにするのか、いろいろな方法があると思います。またプライバシーをどう確保するかも課題です。情報を外部に発信するにあたっては、安全面も十分に考慮しなくてはなりません。ドキュメンテーションをICT化することで、先生の業務を削減することができればよいですが、いまだに監査などは紙の資料で行われています。そうなると紙の記録も作成し続けなくてはなりません。今後、行政も変わってデジタル資料でも監査できるようになることを期待したいです。

・あだちみどり幼稚園 大熊先生
グループの先生方に、現在ドキュメンテーションに取り組んでいるかどうかを聞いてみたところ、まだやっていない園が多い印象でした。「おうちえんドキュメンテーション」などのツールを使えば、絵や装飾が苦手な先生でも楽に作成することができますし、映像・写真でよりたくさんのことを共有することができます。これまで園だよりなどで一生懸命に保育を「見える化」してきましたが、保護者に本当に伝わっているかどうかはわかりません。自分たちが発信している方法が適切なのか、しっかりと伝わっているのかまでケアする必要があると考えています。

・さみどり幼稚園 徳本先生
新しいことに前向きに取り組んでいる先生が多い印象でした。すでにYouTubeやInstagramなどを活用して情報発信している先生、業務のICT化やペーパーレス化に積極的に取り組んでいる先生、園だよりをやめようと思っていると話す先生もいて、とても勉強になりました。業務をどう削減していくのかを考えなくてはいけないと感じました。

まとめ

園の理念や保育・教育について保護者や地域社会に理解してもらい、ファンを増やすこと、また先生同士の対話を増やし保育の質を高めていくことが、これからますます重要になっていきます。ドキュメンテーションはその目的を果たす手段として、非常に有効ではないかと思います。

次回予告

今回のセミナーでは「保育の可視化」をどうするかについて考えましたが、次回のセミナーでは実際のドキュメンテーションの作成方法やその効果について、より具体的に考えていきます。ぜひ、ふるってご参加ください。


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