研究進捗「LGBTQ+と教育」
6月1日
①児童期・思春期におけるLGBTQの子どもたちの支援の必要性
・性指向に気づき始める13歳から、同じ性指向の者に出会う20歳までの間は、不安感や孤独感をもち、その間に当事者がいかにLGBTに対する肯定的なメッセージを得られるか、そして、支持的、受容的な環境にいられるかが重要。
・子どもたちは自らを肯定的に受け止められない環境下で過ごすことは、自身の性指向を肯定的に受け止めることは難しく、否定的なイメージ、自身の欠如、自尊感情の低下につながっていく。環境下によっては、抑うつ傾向や強い不安感、自殺念慮などのメンタルヘルスの課題と深く関連する。
⇒思春期に肯定的な体験をするかどうかが、後のメンタルヘルスに影響する。当事者が肯定的に受け入れることができるような環境下で過ごすことの重要性がある。
⇒学校教育現場においてLGBTQ当事者が肯定的に受け止められ過ごしやすい環境を整えていくことは、生命や安全の確保、人権の尊重を前提とし、健全な発達・成長の保証のためにも重要な課題であると考えられる。
②先生のLGBTに対する意識調査(調査対象:5979人の保育園、幼稚園、小中学校の教員)
・教員の約7割が性的指向について正しい知識を持っていない。3割以上が同性愛は精神病理であると誤解していることが分かっている。多くの教員がLGBTに関することについて授業で取り上げる必要があると感じているものの、実際に授業で取り上げた教員は1割強だった。教員の性的指向に関する無理解を問題視しなければならない。
・生徒の68%がいじめや暴力を受けた経験がある。これらのいじめは小学校低学年から学年を重ねるごとに増加し、中学校2年生をピークに下降している。特に性別違和のある男子は被害に遭いやすく、いじめや暴力の内容も深刻化にしやすい傾向にあった。そのうち教員にLGBTであることを打ち明けたのは1割程度だった。
③人権(道徳の授業の意義)
・1958年に「道徳」が特設されてから、60年がたった。いじめ防止や解消に向けての取り組みでもある「人権の世紀」と呼ばれる現代において、道徳科は人権侵害を防止することにも大きな期待がかかっている。
・道徳の教科化は、「いじめ問題」への防止や解消だけでなく、グローバル化による価値観の相対化を見据えながら諸問題に適切に対応できる力を育成することも指摘されている。また、道徳には多様な見方や考え方があることを理解させ、答えが定まっていない問題を多角的・多角的視点から考え続ける姿勢を育てることが明示されている。
・価値観相対化の中において、道徳科は、地域、家庭、学校あるいは学級の課題や1人1人の子どもたちの状況を考慮しつつ、「現代的な課題」に関する教材を活用しながら、異質の他者と協働しながら展開していく授業実践が求められている。
④人権がある意味
・自分を守るため。お互いを思い合うため。
・人権がなかったら社会的な生活(生きていく上での規則やルール)が成り立たない。
・人権がなかったら犯罪さえも良いという考えになる可能性もある。それを阻止するために人権がある。
⑤展望
・教育大学にて教員を目指す学生にアンケート調査を行う。その質問項目を考える。
・1年半の研究書評により自分の研究への情報は多く集まっていると感じる。そのため、今後は自分の頭で考える研究及びアンケート調査を行った結果から推測できる研究を進める。
5月11日
①大学生低学年に対する理解、共感、受容
(研究対象:京都文教大学臨床心理学部「法学概要」の受講生42人)
・LGBTという言葉を聞いたことがある…80%
・LGBTという言葉の意味も含めて知っている…50%ほど
・これらの情報源はテレビ…69%、インターネット…38%、教育(授業)…23%
⇒LGBT教育が十分に行われていない。テレビやインターネットからのネガティブな情報により差別的な言動を生み出す原因になっていることが否めない。
・自分の周りに同性愛者がいない、いないと思う…67%
⇒LGBT当事者がカミングアウトしないと分からないため、いないという決め付けをしている。カミングアウトを阻む社会的要素の1つである「言わないと存在しないものと理解してしまう」ことが読み取れる。(マジョリティの価値観維持には必要な考え)
②小学校での支援状況
(研究対象:全無作為抽出した全国の小学校3700校)
・セクシュアリティについて相談する場所や施設が存在しているが、それが児童に周知されている学校は24%⇒相談場所として十分に機能していない可能性がある。
原因:相談にのる教職員のセクシュアリティに関する知識や情報が不足している
児童からの相談を受け入れる準備が整っていない
(教職員向けの研修会や手引きの作成が行われていた学校は3割未満)
③教員を目指す大学生に向けての授業展開について
・すべての児童生徒には自己の性的指向、性自認、身体的性に関わる特徴に関わらず、安全な環境で「学ぶ権利」が保障されていることを教える。
例:「トランスフォビア(同性愛嫌悪)」に基づく差別やいじめ等が重大な人権侵害であることを「いじめ防止対策推進法(2017年改定)」等を紹介して気づかせる。
当事者の生の声を届ける。
・教育上の権利保障に関して、最も重要な課題は性的マイノリティ当事者の自尊感情を
育むこと。⇒性の多様性に関する知識を教育課程に適切に盛り込む必要がある。
例:困ったときの対応、単発ではなく複数回の授業
総合の時間に行う⇒(総合の時間のメリット)自己の生き方と一体的で不可欠な課題を自ら発見し、解決していくような学びとされ、解決の道筋がすぐには明らかにならない課題や、唯一の正解が存在しない課題に対して、最適解や納得会を見出すことを重視している。(⇒実現可能性が高い。)
④まとめ
・まずは、教員を目指す大学生に対しての授業で権利等を気づかせる必要がある。無知であれば、小学生に行う授業と変わらないのではないか。
・当事者が近くにいるだけで考え方は変わる。当事者の生の声や、複数回の授業の中で当事者に来てもらうことも良い。しかし、それをするならば、どこの団体からきてもらうのか、当事者の方への配慮等を考える必要がある。
・教育しなければいけない重要性は見出しているものの、そこからが進んでいないように感じる。進めない障壁を追求する必要がある。
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