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ただ一つ、例外が許されたなら

もしも例外が許されたなら、あなたは何を選ぶだろう。


一番多いのは、過去を変えることだろうか。

あのときこうしなければ、逆にこうすればよかった。とか。

次に多いのは、才能や能力だろうか?

人間に翼が生えていたらとか、野球の才能が欲しい。とか。


人は誰でも、後悔や苦しみを抱えている。

もしも、ただ一つでいいから例外があれば、ここまで苦しむことはなかったと。あなたは思うかもしれない。



昔読んだ小説の書き方の本に、「物語にリアリティを持たせるには、例外は一つだけにすること」と書いてあった。

SFなりホラーなり、もしも宇宙で暮らせたらとか、もしも幽霊がいたらとか、現実との大きな違いは一つしかない。

純文学も、現実なら人間関係や終わらないタスクにばかり目がいくけれど、自然や生命の美しさに視点の重きを置く、という例外から成り立つ。

最近流行りのライトノベル「転生モノ」も、「異世界」という一つの例外によって物語は始まっている。



でもよく考えてみよう。

この世界は、果たして例外が無いのだろうか?


贔屓にしている魚屋さんで「今日はおまけね」と一匹増やしてくれたとか、赤信号で横断歩道を渡ったけれど生きてるとか、無期懲役になったけれど仮釈放を受けたとか。

これらは人間が決めた決まりだけれど、全てに例外があるのではないか。


ならば、自然の摂理の点でどうだろう。

死んだ人が生き返ることは無いし、犬が人間に変身することもない。

最近、冷凍マンモスから絶滅した彼らを復活させようとする取り組みが話題になっているが、それは皮膚や毛が残っていたから不可能では無いだけであって、何も残っていない生き物は絶滅したら蘇らない。


しかし死んだらそれまでなのか?

絶滅したティラノサウルスは、今もなお少年少女の夢となり空想の中で輝いている。

仏教では、大切な人との死別に苦しむ人に「住むところが違うだけ、今もどこかで生きている」という言い方をするらしい。

確かに、「心の中で生きている」という表現があるし、大昔に死んだ偉人も本や語り継がれる中で、"生きている"のではないか。

現在宇宙には11次元まであることが分かっていて、死ぬと別の次元に移るのではないかという話もあるらしい。


人間に変身する犬はいないのか?

人間に変身する犬はいないし、人間から犬に変身することはできない。

しかし、ファンタジーの中では、獣人という人と獣のハイブリッドがいたり、人魚がいたり、普段は人だけど戦うときは犬になる生き物がでてきたりする。

空想上のものは存在しないといえるのか。

そんな犬はいないと、果たして否定できるのか?



ならば、

例外がないのではなく、正解がないのだろうか?



1+1が2になるように、地球が平面ではなく丸いように、この世には正解があるものが存在する。(1+1が2とは限らないことは置いておく)

ならば、努力した分だけ結果が伴わないことや、地球温暖化が進むことが分かっていても石油の消費をやめられないことなど、正しいけれど正解でないものはどう説明すればいい。



それなら、全てが例外がということなのか?



死ぬ気で努力したのに、サッカー選手になれなかったとか、心理学の本を読んで実践したけど恋愛に失敗したとか。そういった例外が発生するのは、社会が間違っているのではなく、自分が例外だからかもしれない。


世の中は、「自分と他人」ではなく

「自分と自分以外」でできている。


そう、この世に間違いがあるのではなく、この世で自分だけが例外なのだ。


自分が何者であるか、どんな人間かと他の者と区別する概念を、自己同一性、またはアイデンティティーという。

これがうまく飲み込めていないと、「親に言われたから立派な大学に行かなきゃ」と何浪もしたり、「努力したのに、あいつはできて自分なぜ売れないの?」と30歳過ぎてもギターを掴んでバンドに固執したりする。サクセスストーリーを信じてやまない。いわゆる、自己同一性障害である。


「自分には何も無いんだ」「望んでいた才能は持っていなかったんだ」、そう思うと楽になって世界が明るく見えるようになった。と言う人がいるが、彼らは仕方なく受け入れただけである。

本当は自分のことが嫌いだ許せないと思っているので、「大人になると汚れるんだ」とか「あなたには信じるものがあっていいね」とか、嘆いて、ヒロインのような発言をしたりする。



例外が欲しいと思っている人は、世界に変化を求めているようでも本当は自分が許されたい、ただそれだけなのかもしれない。



もしも一つだけ、例外が許されるなら

なたが 自分らしく生きること


を選びたい。

生きているだけでいい。

あなたの未来を、私は願い続ける。






















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