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「才能か?罪か?」あなたはどう答える?

「才能か。罪か。」
ポスターに書かれたそのキャッチフレーズに
強いインパクトを感じ、昨年の12月に
カラヴァッジョ展に足を運びました。

カラヴァッジョ(ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ)は、16世紀末〜17世紀にイタリアで活躍した画家です。圧倒的な描写力と強烈な明暗かから、異名は「光と闇の画家」。絵画の規範を打ち破り、17世紀のバロック絵画を切り開くという大きな功績を残した人物です。

彼のバックグラウンドを正直全く知らずに
美術館に飛び込んだ私ですが、キャッチフレーズが「才能か。罪か。」である理由を解き明かし、その問いに答えたいという思いで鑑賞にあたりました。

掲示されていた彼の人生の流れを簡潔に
要約すると、以下のような内容です。

「ミラノに生まれたカラヴァッジョは、13歳から絵画修行を始め、ローマに出てその才能を発揮。迫力ある写実・独特な視点で描かれた型破りな宗教画や風俗画で多くの人々を魅了します。

しかし、仕事が順調な一方で、仕事以外の私生活では、彼自身の持つ激昂しやすい性格が災いし、喧嘩や暴力沙汰の事件を起こしてばかり。ついには殺人を犯してしまいます。

その事件後、彼は亡くなるまで、パトロンの庇護を受けながら、逃亡生活を送り、創作活動を続けます。最終的には、恩赦を求めてローマに向かいますが、その旅路の途中で熱病により亡くなります。」

上記の説明だけでも、かなり波乱万丈な人生を歩んでいる人物であることがわかりますし、キャッチフレーズが「才能か。罪か。」である所以もこの経歴からわかります。

カラヴァッジョの経歴パネルに目を通した後に、作品を鑑賞した私は彼の作品から「罪に対する悔恨の念」と「並々ならぬ気性の激しさ」を感じました。

特に名作である「マグダラのマリア」「ゴリアテの首を持つダヴィデ」はもの凄く印象に残っています。

「マグダラのマリア」
イエス・キリストに出会い、自身の罪を悔い
改め、信仰の喜びを得て恍惚状態にある女性。


顔には一筋の涙が流れており、実物を見ないとわかりませんが、左上には十字架と荊冠が描かれてます。殺人の罪を悔いる自身を投影して描いているのでしょう。また、どす黒い背景、衣服の鮮血のような赤からは、彼の心の闇と内面の激しさを感じます。死ぬ直後まで手放さず持っていたというエピソードからも彼の思い入れの強さを感じます。

「ゴリアテの首を持つダヴィデ」
旧約聖書にあるペリシテ軍・イスラエル軍の戦いのワンシーンを描いた作品。

ゴリアテの顔はカラヴァッジョ自身で、彼が最後に描いた自画像と言われています。ゴリアテの表情は苦悶に満ちています。ゴリアテを自分の顔にすることで、罪に苦しむ自身を表現していると思われます。またゴリアテの境遇を自身と重ねて描くことで、罪ある自身の存在を消してしまいたいという気持ちも感じられます。



生半可な気持ちで見てはいけないようなヒリヒリとした緊張のようなものを感じながら作品を鑑賞しました。気性の激しさ、狂気的な才能を隠しきれていない絵画にただただ圧倒された1日でした。

彼自身の人生は「罪を背負うべき人生」であり、その才能は「罪深い性格」なしでは生まれなかった。もし「才能か。罪か。」という問いに答えるのであれば、私は「罪」だと答えます。

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