5万円の投資は迷わないのに、5万円のバッグは渋った
金の話である。
私はずっとバッグが欲しかった。
子どもが生まれてからお出かけはリュックで、抱っこしやすいように生きてきた。
しかし、最近「サッとバッグから物を出したい」意欲に駆られるようになった。
もちろん両手は空くのが大前提で。
ショルダーバッグである。
私の理想を叶えるのは、ショルダーバッグである。
私は密かにショルダーバッグを探し始めた。
最初は「長く使う物だし、私働いてるし、いいバッグを買ってもいいんじゃない?」と思い、エルメスのバーキンを見た。
ショルダーバッグじゃないし、ゼロが2個くらい多かった。
ゼロが2個多いとは思わなかった。1個は多いだろう、とは思ってたけど。
プレパラート並みに儚いバーキンへの憧れがさらりと砕け散る。
しかし、「ちょっといいバッグを買ってもよかろう」という気持ちはブレなかった。
5,000円くらいのバッグでは、ちょっと気に入らないとすぐ次のバッグが欲しくなるからである(2,900円のリュックは毎日愛用してるが)。
36歳。
ちょっといいバッグも一つは持つお年頃だと思う。
というわけで、バーキン以外のちょっといいバッグを探し始めたものの、
ぜんっぜん見つからない。
なんかこう、ちょっと品もいいのに少しロックで(チャックや金具など)、黒の本革で、シンプルで長く使えるもので、若干のネームバリューと、背伸びすれば手に入る30,000円〜40,000円くらい。
全っっっ然、見つからないのである。
というより、ネームバリューを言ってしまうと20万前後に軽く吹っ飛ぶ。
ちょっといいバッグってこんなにするんだ、とスマホ片手に唖然とした。
革以外の素材(ナイロンなど)だとどの程度「安く見えないか」「カジュアルになりすぎないか」がオンラインだと分かりにくい。
これはちょっとコロンとしててかわいすぎ、
いやシンプル過ぎるだろ
えー、肩紐痛くない?
とめどなく溢れてくる批判。
軽く数ヶ月が流れ過ぎていった。
先日、お義母さんが遊びに来た時、「子どもたち見てるからお買い物してきたら」と神のお告げがあった。
私は初めてバッグとオンラインではなく対面で会うこととなる。緊張。
緊張しながらブティックへと足を踏み入れる。
えええええーーー可愛いの多いがな!!
写真で見るより全然かわいい!!!
なにこれーーーへーーこのサイズで30,000円か
ふむふむ、と思いつつも次々と可愛いバッグと出会う。
新しい私、こんにちは。
ふと、視線を上に上げると黒くて無骨ででも上品でシンプルで、でも素敵な、SO、私が探してたようなバッグが棚の上部に並べられていた。
運命の出逢い。
そっと手を伸ばす。
いい質感。
これは、高いのでは、40,000円ゾーンか。
ドキドキしながらバッグの中に秘められた値札をそっと確認する。
運命の瞬間。
59,000円(税抜)。
私は少しだけ考え、そしてそっと値札をしまい、店員にバレないことを願って静かに元あった場所へと戻した。
税込6・・!?
6行くよね・・!?
たっっっか・・!!!
明らかにバレそうなほど、私はそそくさと店を出た。
高過ぎんだろ、6万なんてバッグに出せないよ!!!
そう思った時、ふと頭をよぎる。
iDeCoとつみたてNISA。
私は毎月合計55,000円積み立てている。
その積立分は「投資」という位置付けだから全く痛くない。
じゃあ、さっきのバッグは?
私にとって「投資」ではないのか?
バッグは増えることなく、減価償却されていくから?
そのバッグを手に入れた生活に価値はないのか?
なぜ、バッグは高過ぎると感じ、毎月の積立投資は何とも思わないのか。
59,000円の価値はバッグに乗り移らないのか。
答えは出なかった。
ただ、「どんなにいいバッグでもそこまでお金は出せない」が私にとっての価値観だったのだろう。
結局私は25,000円程度のナイロンバッグを買った。
ネットで画面越しに眺めるより、実物見た方が早い、ということだけは分かった。
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