#萌渋スペース 法務の体系的教育試論~会社によって違うを超えて~の感想文 

 相槌役のくまったです。
 第13回の萌渋スペースも無事終了し、ほっと一息。
 まずはdtk先生、経文先輩、リスナーの皆様に感謝申し上げます。

 今回のお題はいつものとおり私からお二人に提案しました。以前に聞き逃したおもちさんと酒井先生のスペースで「法務の体系的教育」が話題になったようで、TL上で面白そうな議論が流れていくのをみてたのですが、私の最初の感想としては「そりゃ無理だ」というものでした。私が(狭義の)若手弁護士であった時代はみんなそうでしたが、司法修習はともかく、実務に出てからは徒弟制度のなかで、師匠の仕事を盗み見して技を盗む、皿のソースをなめる、模範六法で殴られるというような修行で育ったくちです(嘘です。師匠は手を取り足を取り、というタイプではありませんが、ノウハウは惜しげなくオープンにしつつ、OJTのなかでガンガン鍛えていくタイプでした。)。

 しかしながら、「それ」は本当に不可能なのか、経験豊富な法務人であるdtk先生と経文先輩にぶつけてみよう、難しい問題をぶつけて困らせてみたい彼らなら何らかの答えを示してくれるかもしれない、と思い提案をいたしました。しかも、「会社によって違う」という言い訳結論は封印するという無理難題条件で。
 お二人からは、開口一番、「難しいなあ…」という反応をいただきましたが、すぐ後に「でも面白いかもなあ」という反応もいただきました。

 その結果が今回の萌渋スペースで話した内容であり、お二人のお話の内容はそれぞれblogで公開されていますので、以下のリンク先をご覧ください。

「会社によって違う」を超えて - dtk's blog(71B)
Beyond "it depends". #legalAC #萌渋スペース

 さて、打ち合わせ(通称”ブルペン”)のときに、お二人の原稿を拝読した後に述べた私の感想というかコメントを公開してはどうかと、威圧感のある心温まる提案をいただきましたので、感想文としてnoteにすることといたしました。無理難題をふった私への意地悪ではなく、若手弁護士である私に花を持たせるための善意に基づくものだろうと理解しました。
 以下の引用は私のコメント、私なりの感想文です。
 ※原文が内輪向で雑多な文章であったため、当時のコメントそのままではなく、感想文とするために若干(?)修正をしています。

 経文先輩による4分類のマトリックスは法務の各技法、知見の分類法として大変鋭いと感じました。 いままでは「会社によって違う」ということで深堀りできなかった部分ですが、そこを特殊知として把握すれば、法務の中核的な知見と技法は、実は汎用知にあるといっていいのではないか。それは基礎、土台、と表現してもいいかもしれないですね。dtk先生ご指摘のように、仮に他業界へ転職した場合でも法務マンとして通用するかどうかは、この汎用知を会得しているかどうかは大きい。もちろん特殊知も、当該企業(業種)の企業人として差別化し、価値を提供するためには必須の技法、知見であろうと思います。 その意味で体系的教育をするためには、この分類のどこの知見と技法を教育しているのか、あるいは、していくべきなのか、その一つの指標となりうるアイデアではないかと考えます。 
 私の理解が至らない部分ですが、Dの「汎用知ー暗黙知」の部分、ここの内容をどう明確化し、会得していくべきなのか。経文先輩の試論では、Cの「特殊知ー暗黙知」からの一般化、という言及がなされており、なるほどと思いながらも、もう少し深く掘り下げたい、というところです。しかしながら、ここがまさしく暗黙知であるがゆえ、言語化しずらいのかもしれません。
 経文先輩の原稿を拝読したうえで、改めてdtk先生の三段階の手順(リスク分析、リスク軽減策の検討、対応策の呈示)を考えてみると、極私的な解釈としては、動的なもの、時系列、思考パターンであると理解しました。 この三段階の手順は私としては非常にフィットするというか、実際に私が法律相談等や事案の検討で無意識に行っている手順ほぼそのままだからかもしれません。 これは「汎用知ー暗黙知」が「汎用知ー形式知」へと転化する、言語化されたものではないかとの印象をもちました。

 話は変わりますが、お二人と違う角度から体系的教育の具体的な方法論を考えてみました。 もちろん、経文先輩の4分類とdtk先生の三段階の手順が大前提です。 
 まず、メニューとしては、

(基本的法知識)
   ヒアリング
   ドラフティング
   リサーチ
   事実認定
  (交渉技術)


があげられるのではないか。これは業務内容を分類して考えました。
 なお、交渉技術は最初の段階では不要かな?と思いましたので()にしています。(※1)

 そして実際の手順としては、

座学→事例練習orロールプレイ→OJT

 となるかと(これは一応の順番ですが、実際には一方通行ではないだろうと思います。) 形式知から暗黙知へ、汎用知を中心に学ぶことになろうかと思います。そのうえで経験を踏まえて形式知を学びなおすということになるでしょうし、もちろん、オプションとしての特殊知の教育もありうると思います。
 こう考えていくと、徒弟制度による職人的、感覚的な教育方法から、理論的、標準化した体系的教育の輪郭がみえてきたりする…しないですかね?
くまったのブルペンでのコメントより

 そもそも「体系化」とは何か、「何を」体系化しようとしているか、などの検討すら十分でないまま、二人に思いつきを投げてしまったのは私であり、今回のテーマに関する称賛はお二人に、批判は私一人がうけるべきと思っています。
 しかしながら、「法務の体系的教育」というこれまで否定的にみられたものについて、ああでもない、こうでもない、そういえばこんな考え方があるんだなあ、それは違うんじゃないか、という議論の端緒になるのではないか、そのための試論ではないか。
 「法務の体系的教育」という無理難題に対して、ひとつの視点の提供、ひとつの試論、ひとつの議論のきっかけになれば良いなと思っております。

 改めて無理難題にお付き合いいただいたdtk先生、経文先輩に感謝申し上げますとともに、抽象的な議論を我慢強くお聞きいただいたリスナーの方々に深く感謝を申し上げます。

以上!

※1 交渉技術については、dtk先生から、「交渉技術とドラフティングは実はセットではないか。メールでの契約書案のやり取りで、条項の修正案に理由をコメントでつけて返すみたいなやり取りだと、両方考えた動き方をすることになると思う」というコメントをいただきました。

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