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全宅ツイ会館建設プロジェクト(破)

建築とは箱を作って終わりではない。
箱はその中に何を入れるかによってその価値を決め、中のものがどうなるかで箱の価値が生まれる。

連日暑い日が続いていた夏の日。
僕は更に暑く、湿度の高いDMグループに居た。

この高温高湿度の原因は間違いなく蒸気機関車のような勢いで動く会長。
その熱にやられて僕と大丈夫くんは熱中症になりかけながら会長の火室に石炭をくべていた。

箱の中身

ノリで作ったCGも所詮は箱。
普段は住宅ばかり作っている零細事務所のお鯛建築事務所は店舗の内装や厨房機器の選定などの経験は殆ど無い。

10年くらい前に1年で2回空き巣に入られたロードサイド飲食店を作ったくらいしか経験がない。

そんなわけで大丈夫くんに厨房などのレイアウト案を描いてもらってそれを図面化することにした。
餅は餅屋である。「こんな感じで。」イメージがすぐに上がってきた。

コの字に配されたコンパクトでありながら機能的な配置。狭小店舗でワンオペでも使いやすさが見るだけで伝わってくる。

でも、大丈夫さん。忘れてるかも知れないので念のためおさらいしますね。

建物の幅1mなんですよ。

コの字どころかL字配置だってキツイんですよ。

まぁ、施主が描いてきたEXCEL方眼紙のプランから意図を読み取り、図に落とし込み、実現するのが僕ら設計者の仕事ですからね。こっから頑張ります!

厨房機器の奥行きはだいたい45cmか60cmの二種類。有効幅から考えたら60cmの奥行きの機器置いたら、店長の総帥が歩くスペースも儘ならない。
「そもそも、酒を店員がサーブする必要無いんじゃない?」
「客席側にショーケース置いて勝手に取ってもらう」
「店内調理する必要ある?」

そんな異次元の打合せを経ながら内部の設計を進行しつつ、建築士最大の仕事の一つ、

建築確認申請

のお時間がやって参りました。
いままで出した物件のどれよりも小さく、どれよりもプレッシャーのかかる申請でした。

申請やプランの話は全宅ツイのノートで詳しく書いたので暇があるときに読んでもらえると。

あっちに書けなかった部分でいうとまず第一面からもう頭おかしい。

申請者 全国宅地建物取引ツイッタラー協会 代表社員 新宿太郎。

んー、ギリギリ実在しそうだしそもそも申請者名は実名じゃ、なきゃダメって決まりは無いよね?
そもそも総帥、全宅の集まりでも修行先の飲み屋さんでも「太郎ちゃん」って呼ばれてるし本名よりも多く呼ばれてそうだし…。元国交大臣の扇千景さんだって芸名だし。

って思ったら印は本名だったんですね。すみません。
そしてさらに申請時の心理的負担になったのが印鑑

なにこのゴリラ印?

聞いたらこれが正式な全宅ツイの社判とのこと。
こんなふざけた申請書も2020年末に実施された確認申請の押印廃止によってもう二度と作られる事のないレア物となったのでした。

建築確認って物件名を記載するんですよね。
書きましたよ。

(仮称)全宅ツイ会館新築工事

3坪の平屋で用途飲食店なのに、なに?会館って。
そんな名前つけたもんだから審査機関に訂正の打合せとかするときに「全宅ツイ会館新築工事の件で…」とか言うはめになるんですよ。

審査機関の指摘事項も難なくクリアし、いざ本審査!ってなった頃

DMグループの話の盛り上がりから

建築計画のお知らせ看板を出すことに。

街中で一度は見たことありますよね。一定規模以上の建物を建てるとき、近隣住民と揉めないように事前に建築の計画をお知らせしておくようにする条例があるんですよね。

本件敷地の杉並区だと「杉並区中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例」って言うんですけど長いですよね。

まぁ全宅ツイ会館は平屋で3坪なのでこの条例に引っかかるような規模でも無いのでお知らせ看板出す必要もないんですけど、そこはノリが大好きな全宅ツイ。

こんなふざけた看板出しちゃいました。

そもそも出す必要が無いものを勝手に出してるだけなので本来ちゃんと書かなきゃいけない欄も

書きたいように書く!

ほら、下の方にちゃんと「条例によらず建築主の自由意思に基づいて設置したものです」ってテプラで直しときましたからね!

自由意思だから「上記計画についての説明の申し出は」

お受けしておりません。

ひどい。
そしてこの看板は効果覿面!

設置したその日の内に裏の家の人から地主に通報が入りました。

本当にひどい。

そんなこんなで建築確認も無事下りて、強風の11月某日地鎮祭を執り行いましたが、この異次元の地鎮祭はキャンプファイヤーの活動報告でお楽しみいただければと思います。

神主さんが敷地からはみ出る地鎮祭ってやったことある?

さて、ついに着工しました!もう前に進むしか無いんだ!やるぞ!

ところで気づいた事が一つあります。
このプロジェクト、元請けとしての粗利はちゃんと頂いたものの…

設計料の話して無かったな…。

そんなこんなでお鯛事務所は設計事務所なんだか工務店なんだかよくわからない感じで船出となりました。
まぁ、あくのさんから15%もらえるらしいからまぁいいか!

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