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【第3話】未来人のファッションセンス

相変わらず、私の中では夫は「未来人(疑い)」というラベルが貼られっぱなしだ。

今日は未来人のファッションセンスについて考察してみる。

ファッション無関心未来人

サンプルが夫しかないので恐縮だが、どうやら未来人はファッションにあまり興味がないらしい。
どうも、着飾って楽しむという習慣が無いようだ。

家では基本的にパーカーを着ている。
パーカーは5着ほど持っているが、全部ユニクロだ。

下もユニクロが多い。
ストレッチなんとかをよく履いている。

楽な服装で過ごしたいというのは伝わってくる。
その意味ではファッションのコンセプトは一貫している。
合理的なところは未来人っぽくていい。

夫は「体を冷やさないように」という意識が強いのか、年がら年中ヒートテックを着ている。
夏場はさすがに暑いのかヒートテックだけでウロウロしている。
この姿も未来人っぽい。
というか、夏は脱げよヒートテック。

とはいえ、TPOに合わせた服装はできるので、
「ファッションは相手が不快じゃなければいい」
くらいに割り切っている様子だ。

ちなみに夫は、いわゆるファッションリーダー的な人が他人の服にあれこれ言っているのを不快に感じるらしく、テレビでファッションチェックなどのコーナーが始まったら真っ先にチャンネルを替える。

夫が流行りのファッションを追いかけることはない。

そういえば、以前、テレビで流行のファッションについて取り上げられていたのを見ながらこんなことを言っていた。
「シャツインしたり出したり、ズボンのすそが広がったり狭まったり、タイトになったりゆったりしたり、みんな”せーの!”でよくやるよね」

アイツ、流行の移ろいを諸行無常と思ってそう。
未来人にとって今の流行はすでに過去のものだからだろうか。
テクノロジーの流行り廃りは興味津々のくせに、ファッションの流行り廃りは本当にどうでもよさそう。

毎日同じ服を着るとしたら?

スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグはいつも同じ服装で有名だ。
服選びにかける時間がもったいないとかの理由らしいが、彼らからも未来人気質が感じられる。

夫は、彼らと同じように毎日同じ服装をするとしたら何を選ぶのだろうか?
夫にきいてみたところ、上はパーカー、下はチノパン、靴はナイキのレザーコルテッツで色はグレーだそうだ。

急に出てきたなレザーコルテッツ。
「パーカー」「チノパン」と来たら「スニーカー」でいいだろ。
レザーコルテッツは商品名じゃないか。
しかも色指定。
なにこだわり見せてんだ。

なぜレザーコルテッツなのか?
答えはシンプルに「自分の足に合うから」とのこと。
「あと、かたちがホットドッグみたいでかわいいよね」だって。
ホットドッグと言われれば似てるようにも思うが、私はホットドッグをかわいいと感じたことはないので、未来人の感性は独特だと思った。

未来人だからZOZOスーツみたいなものを期待してたけど、意外と現代にアジャストしてきたな。
私はそれすらカモフラージュだと疑っているけどね。

なぜファッションリーダー風の人が嫌い?

「夫さんってさ、ファッションチェック系の番組、嫌いだよね」
ぼんやりとYoutubeを見ている夫に質問をしてみた。

「うーん、道楽を押し付けてるようにしか見えなくて不快」
未来人には道楽の押し付けに見えるらしい。

もっとくわしくきいてみたところ、要点としてはこうだ。

  • 社会通念上間違ってない、標準的な服装というものはあると思っている

  • 流行のファッションは差別化のために標準から逸脱するもの

  • それが自己満足で完結してる限りは好きにやればいい

  • 他人の価値観にまで自分の尺度で優劣つけようとするのが気持ち悪い

「へぇ~」と返事したものの、理解できたかどうか確信が持てない。
それが伝わってしまったのか、夫はたとえ話を始めた。

「奥さんは納豆好きでしょ?」
「うん」
「誰かが”そんな腐った豆を食べるのは間違ってる!”って言ってきたらどう思う?」
「うるせー、だまれ、死ね、って思う」
「言葉が強いな」
「たしかに言い過ぎた」
「でも、余計なお世話だと感じるよね」
「そうだね、そいつが納豆を食べなければいいだけだし」
「そうだよね、他人にはどうでもいいことの好き嫌いを押し付けるのはおかしいよね」

ああ、なるほど。
夫がファッションチェックを嫌う感覚がなんとなくわかった。
でも次の言葉はちょっと怖かった。

「でも、好きなファッションを楽しむゆとりがあるのは平和な証拠だよね」

やはり未来はゆとりも平和もないのか?

「うーん、でも他人をサゲなきゃファッションを楽しめないのは、やっぱり心にゆとりが無いってことなのかなぁ」

やっぱりってなんだ。
もしかして、現代人の心にゆとりが無いせいで悲惨な未来を迎えることになるのか?

夫のことは未来人だと疑っているが、時々、戦時中を語る老人と重なるように感じることがある。
選べるだけでもぜいたく。
夫の考え方は、選べなかった体験が裏にあるからではないか?
未来は意外と物資が潤沢じゃないのかもしれない。

とりあえず、夫の誕生日にはホットドッグでも作ってみるか。
レザーコルテッツは・・・手に入りそうなら考える。

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