大月書店通信*第140号(2020/9/30)
「大月書店通信」第140号をお届けいたします。
新型コロナ感染の影響により、今年1月から9月23日までに仕事を失った人が6万人を超える、という厚労省の調査が発表されました。すさまじい事態ですが、これはハローワークが把握できた数値のみですから、実際にはもっと多いと見られています。しかも廃業の危機に直面する中小企業は多数にのぼり、残念ながら、この状況が深刻化することは十分に予想されます。
世界銀行が6月に発表した経済見通しによれば、世界経済は、第二次世界大戦以来最悪の景気後退に直面するといいます。
経済格差を拡大する新自由主義的資本主義の弊害が指摘されるなかで、全世界を襲った新型コロナ感染症は、そのひずみをより鮮明にしています。今、求められているのは、この危機的状況からの「大転換」です。
そして今、まさに再注目に値するのが、人間と自然を商品として取り扱う市場経済を批判し、人間の自由と民主主義を掲げたカール・ポランニーの思想と理論です。
9月新刊『現代に生きるカール・ポランニー』は、ポランニー理論の全体像を歴史のなかに位置づけ、今の時代状況へと再構築を試みる労作。著者のギャレス・デイルさんが、コロナ禍のもとで寄せてくれた「日本語版への序文――『大転換』からグリーン・ニューディールへ」は、気候破壊に対するアプローチを考えるうえでも有益です。
「コロナ以降」の世界を考える指針として、お手に取っていただけますと幸いです。
新刊案内『現代に生きるカール・ポランニー』ほか9月の新刊
9月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。
●混迷から転換へ――今、ポランニーは甦る
『現代に生きるカール・ポランニー ――「大転換」の思想と理論』
ギャレス・デイル[著] 若森章孝・東風谷太一[訳]
第一次世界大戦~大恐慌~ファシズム~第二次世界大戦へ。自由主義的資本主義が行き詰まり、民主主義の危機の時代に対峙したポランニー。その思想的系譜と理論の全体像を描き出し、今日的意義を明らかにする。
☆推薦☆ 斎藤幸平さん(大阪市立大学准教授、経済思想家)
●争いつづけた人類の歴史を一冊でふりかえる
『これならわかる戦争の歴史Q&A』
石出法太・石出みどり[著]
戦争のはじまりから、現代の戦争、さらに核兵器廃絶の動きまで一冊で。戦争のあり方の変化、平和を求める人々の努力をふりかえることで、世界史が新鮮に見えてくる。中高生から読める好評シリーズの最新刊。
●感染症にかかったら学校に行ってはいけない法律がある
『人権と自然をまもる法ときまり 2 健康と福祉をまもるきまり』
笹本 潤[法律監修] 藤田千枝[編] 坂口美佳子[著]
障害者の教育や労働・生活など、生きる権利をまもる法律があります。子どもの健康や感染症についてのきまり、薬や食品にたいする厳しい規則、医療や介護、生活保護などの社会保障の具体的なきまりを分かりやすく解説します。
●特集=「コロナ禍」を子どもと生きる
『月刊 クレスコ』10月号 no.235
3か月にも及んだ休校は、子どもにとっても大人にとっても初めての経験だった。子どもたちはこの事態をどうとらえたのか。その表情や行動、発する言葉を受けとめ、これからの子育て・教育・社会のあり方を考える特集。
話題の本『これからの男の子たちへ』たちまち3刷!
8月21日に刊行したばかりの『これからの男の子たちへ――「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子 著)。ウェブ記事や主要紙で続々と紹介され、早くも3刷となっています。
☆『毎日新聞』9月19日 評者・渡邊十絲子さん(詩人)
☆『朝日新聞』9月28日夕刊「社会の『男らしさ』、問い直す 『効率とらわれ、ハラスメント無自覚も』」
☆『朝日新聞』10月3日子育て面「『男子ってバカだよね問題』って? 溺愛が思わぬワナに」
☆『ウートピ』9月23日「読書の秋に。小島慶子が推薦するジェンダー問題と向き合うための2冊」
10月4日(日)午前10:05~ J-WAVEの番組「ACROSS THE SKY」のコーナー「MY BOOKSHELF」に、著者の太田啓子さんが出演しました。
子育て中の方はもちろん、ジェンダー問題に関心のあるすべての方におすすめです!
☆試し読みできます
★『ふるさとって呼んでもいいですか』著者インタビュー★
昨年6月に刊行し、産経児童出版文化賞・ニッポン放送賞を受賞するなど好評を博した『ふるさとって呼んでもいいですか――6歳で「移民」になった私の物語』。著者のナディさんへの最新インタビューが下記サイトで読めます。
☆『soar』9月24日「私は“日本人”でも、“イラン人”でもない。アイデンティティは自分で決める。『どうありたいか』を大切に生きるナディさん」
お知らせ
★「教科書・参考書目録2021」を作成しました★
大学・短期大学・専門学校などでの教科書採用をご検討の先生方のために、
「教科書・参考書目録」2021年度版(PDFファイル)をご用意いたしました。
最近の刊行物を網羅した「図書目録2020」もご参照ください。ご希望の方に無料でお送りします。
編集後記
自殺者の数、特に女性のそれが、前年に比べて増えているとのことで、とても心配です。コロナの影響で、生活の見通しに絶望した方、精神的・身体的なつらさに耐えられなくなった方が続出しているのではないでしょうか。しかしまあ、このかんの政権からは、「一緒に生き延びよう」という頼もしいメッセージを感じたことは一度もないですね。それどころか、「自助・共助・公助」や中小企業つぶしが政策理念とは。こんな「先進国」ってあるでしょうか。(Q)
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