大月書店通信*第133号(2020/2/28)
「大月書店通信」第133号をお届けいたします。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちの生活に大きな影響が出てい
ます。こんなときこそ決して排外主義におちいることのないよう、日本社会で
隣人として暮らしている多様なルーツをもつ人たちを排斥することのないよう、
強く戒めたいものです。
そうした共存社会を築くための初めの一歩として最適な絵本が、2月新刊の
『きいてみよう! 世界のことばでこんにちは』です。おたがいを知り共に生き
るには、コミュニケーションが不可欠。本書では、130言語以上もの挨拶や自己
紹介のフレーズを紹介しています。しかも専用のウェブサイトで発音を聞くこ
ともできます。
類書があるなかで本書がきわめてユニークなのは、日本ではあまり馴染みのな
い言語、とりわけ北中米や南米、オーストラリアなどの先住民の言葉を多数掲
載している点です。加えて、それらの大陸で英語やスペイン語といったヨーロ
ッパの言語が話されるようになった歴史も書かれています。
この春、ぜひ多様な言語にふれてみてください。進級・進学するお子さんやお
孫さんへのプレゼントとしてもオススメです。
新刊案内 『きいてみよう! 世界のことばでこんにちは』ほか2月の新刊
2月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。
●130を超える言語の「こんにちは」を紹介
『きいてみよう! 世界のことばでこんにちは』
ベン・ハンディコット[文] ケナード・パク[絵] 上田勢子[訳]
「こんにちは」「元気?」「お名前は?」といったあいさつを、大陸ごとに130
以上の言語で紹介します。先住民と植民地化の歴史など、各言語の簡単な解説
もあり。ウェブで100以上の言語の5~7フレーズの発音が聞ける!
☆専用ウェブサイトはこちら↓
☆米国NCSS(社会科教育協議会)とCBC(全米子どもの本協議会)が選ぶ
「若い読者のための注目の社会科の本2017」選定!
●身近なたべもののおどろきの歴史が満載!
『世界を変えた15のたべもの』
テレサ・ベネイテス[文] フラビア・ソリーリャ[絵] 轟 志津香[訳]
ジャガイモ、トマト、トウモロコシ…どこからやってきたか知っていますか?
身近な作物や食品がいつ世界に広まり、どんなふうに食べられてきたかを美し
い絵と図解で見せる。レシピや統計データ、気候変動による影響なども解説。
☆第1回「子どものための優良知育本・イベロアメリカ賞」受賞
●《シリーズ完結》主権者である私たちが経済社会のあり方を決める
『くらす、はたらく、経済のはなし⑤ 経済の主人公はあなたです』
山田博文[文] 赤池佳江子[絵]
「経済」=「エコノミー」とは、そもそも家のくらしのことです。私たちがは
たらき、給料をもらい、消費してはじめて経済が成り立ちます。ですから、健
康で文化的な生活は国民の権利であり、社会のあり方はあなたが決めるのです。
●特集=キイ局番組制作トップに女性はゼロ
『放送レポート』3月号 no. 283
●「在京テレビ局女性割合調査報告」から見えたもの(民放労連女性協議会)
●日韓メディア労組の新時代(南彰)●表現の不自由展中止事件の〈本質〉と
は何か(安世鴻・岡本有佳・アライ=ヒロユキ・番園寛也・岩崎貞明)ほか
●特集=3.11から9年、「復興」を問う
『月刊 クレスコ』2月号 no.228
東日本大震災から9年。「復興五輪」がアピールされる陰で、子どもたちや学
校の困難は今も続いている。被災地からの声を受けとめ、全国の学校・教育・
子育ての課題として考える特集。
話題の本 4月刊行予定『ファシズムの教室』ほか
★『ファシズムの教室』著者・田野大輔さんラジオ出演★
4月に刊行予定の新刊『ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか』。著者の田野大輔さんが、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」に出演しました。
「ファシズムとは何か?~〈ナチス体験授業〉から見えてきたもの」
田野大輔(甲南大教授)×荻上チキ(評論家) 2020年2月24日放送分
ネットで話題沸騰した「ファシズムの体験学習」を紹介しつつ、ファシズムの
仕組みを解説する本書にも、早くも注目が集まっています。ぜひご予約を!
★バーニー・サンダース快進撃。自伝もお読みください★
米国大統領選挙の民主党候補者選びでトップを走っているバーニー・サンダー
ス上院議員。小社では2016年に自伝を刊行していますが、最近また売れ始めています。全米の若者が熱狂する「社会主義者」とは何者か? 未読の方はこの機会に! ☆試し読みできます
■お知らせ
★月刊『クレスコ』価格改定のお知らせ★
2020年5月号(5月1日発行)以降の価格を以下のように改定させていただきま
す。
現行価格:476円+税 → 新価格:500円+税
これまで以上に質の高い雑誌をお届けできるよう努力してまいりますので、何卒
ご理解をたまわりますよう、お願い申し上げます。
編集後記
マルクスは「資本主義は自らの墓堀人をつくり出す」という有名な言葉を残して
いる。労働者階級の形成(主体的条件)と生産力の発展(客観的条件)の両面を
意味している。生産力の発展が生産関係を変化させ、いわばそれに見合うかたち
で次の社会構成体へと移行する。この社会発展の基本法則に疑義が生じている。
マルクスの時代には存在しなかった地球環境問題によって、「生産力の無限の発
展」という前提はすでに崩れているのではないだろうか。気候変動は、ある地域
には海温上昇による未曽有の規模のハリケーンを、ある地域には熱波による干ば
つや大規模な山火事をもたらす。赤道と極の温度循環を阻害し、地球全体の温度
分布を激変させる。それは生態系を歪め、熱帯の感染症が全地球的規模に広がり、
新たなウイルスの発生が多発したりする。ICPPは、あと10年以内にCO2の排出量
を減らせなければ、地球は再生不能になると警鐘を乱打している。この状況でな
お、昨年のCOP25では先進国のエゴで何ひとつ対策を合意できず、世界はひとつ
になれなかった。「家が火事なのに大人たちは金もうけの話ばかり。未来は私た
ちのものなのに!」というグレタさんの直言はだれよりも明快にことの本質を言
い当てている。
前述の「墓堀人」にはもうひとつの意味が加わりそうである。「このまま資本主
義が生産力を高めつづけていけば、人類は早晩この星に住めなくなる日を迎える」。
1972年のローマクラブの「成長の限界」という警告が50年の時を経て、現実の課
題として可視化されたというべきかもしれない。エネルギー消費、人口爆発、食
料資源などを国を超えて、全人類的規模でコントロールするシステムを構築しな
い限り、「持続可能な社会」など永久にやってこない。SDGsの核心はそこにある。
政府や経産省、文科省、そして大企業までもが、こぞってSDGsをアピールしてい
るが、CO2の削減目標も示さず、石炭火力の増設も見直さずでは、アリバイづく
りのパフォーマンスと言われても仕方あるまい。もはやアメリカファーストでも
企業ファーストでも、消費者ファーストですらない、私たちはまぎれもなく「地
球ファースト」の時代を生きている。(M.S)
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