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先生が先生になれない世の中で

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雑誌「クレスコ」に好評連載中の教育研究者・鈴木大裕さんの教育事情レポート。
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先生が先生になれない世の中で(3)私たちの教育マニフェスト

先生が先生になれない世の中で(3)私たちの教育マニフェスト

鈴木大裕(教育研究者・土佐町議会議員)

高知では、11月7日、県知事選が始まった。

3期務めた尾﨑正直知事が衆院選に自・公推薦で出ること、後継者として任命した浜田省司氏が、自・公の推薦取りつけを優先して与党色が一層濃くなったことに危機感を募らせた野党は、統一候補を立てることで一致。

尾﨑県政の良いところは継承しつつも、国に対して「いかんものはいかん!」としっかり言える高知県であってほしいと願

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先生が先生になれない世の中で(2)「お客様を教育しなければならない」というジレンマ

先生が先生になれない世の中で(2)「お客様を教育しなければならない」というジレンマ

鈴木大裕(教育研究者)

「教員はサービス業だから。」
18年前、当時教育実習生だった僕に、ある教員が誇らしくそう語った。
チャイムの2分前には教室の外で待機し、チャイムと同時に入室。カバーすべき単元を無駄なく授業し、チャイムと同時に授業を終え、生徒と会話をする間もなく教室を後にする。
授業を提供することに徹するその姿は、まるで塾講師のようで、確かにきちんとしているように見えた。でも、せっかく早く

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先生が先生になれない世の中で(1)全米を揺るがしたウェストバージニア州の「違法」教員スト

先生が先生になれない世の中で(1)全米を揺るがしたウェストバージニア州の「違法」教員スト

鈴木大裕(教育研究者・土佐町議会議員)

アメリカの教職員が怒っている。アメリカ合衆国労働統計局のデータによれば、2018年だけで約50万人の労働者がストなどで仕事を休み、そのうちの約40万人は教員だった。教員の給料は安く、59%の教員が生活のためにパートを掛け持ち、50万人以上の教員が社会保障を受けていない*1ことからも、アメリカにおける教員の「使い捨て労働者」化がうかがえる。2018年、教員へ

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