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タイムパトロールも大変だ!

「じ、自殺はやめなさい!」
今にもビルの屋上から飛び降りそうな男に、息を切らせながら登ってきた男が恐る恐る近づこうとしている。
「お前に俺の気持ちなんて分かるか!」
手すりを離したらビルから落ちるギリギリの所で、自殺しようとする男も決心が定まっていないのか、手すりを離す素振りを見せない。
「何をやってるんだ。まず、身柄確保だ。話し合いは後」
自殺を止めさせようと近づく男の後ろから、走りながら手すりを離さない男にその機会すら与えず掴みかかる強靭な手練が、あっという間に自殺しようとした男を中に連れ戻した。
「ちょっ、離せー、俺はもうここから飛び降りて死んでやる」
自殺しようとしていた男の言葉には、ほんの少しだけ安堵感が漂っていた。
「で、君はこの現場初めて?」
強靭な手練の男が、怯えて自殺を止めようとした男に聞いた。
「は、はい。昨日、ここにタイムリープしました」
強靭な手練は全てを理解しているようで、言葉に疑問を感じていない。
怯えて自殺を止めようとした男は、ハッと我に返り言ってはいけない言葉だったと後悔を滲ませるが、無用の後悔だったとすぐに思い知らされた。
「時空新聞の人口は?」
強靭な手練が怯えて自殺を止めようとした男に聞いた。
「か、変わりありません」
怯えて自殺を止めようとした男が時計を見て答える。
「そりゃそうさ」
自殺をしようとした男が口を挟む。
「俺は元々この時代にはいない存在さ。自殺を悔い改めさせ、何回も一人の女性の一生に関わって、いつしか恋してしまったんだ。でも、この世界に戸籍の無い俺が彼女と結婚も出来ず、結局未来なんて変えられねえんだ!お前だって時期にそうなるさ!!」
自暴自棄な自殺志願者もまたタイムパトローラーだった。
「お前の大事な彼女に、お前の全てを話したのか?」
強靭な手練が諭すように言う。
「どうせ、信じちゃ……」
俯く自殺志願者。
「ダメ元でも真摯に尽くせば理解してもらえるはずだ」
強靭な手練が自殺志願者の背中を叩く。
怯えて自殺を止めようとした男がふと時計を覗くと時空新聞の人口が増加していた。
「これはあなたの意思じゃないのかもしれませんが、今のあなたの気持ちが人口を増やす事に繋がったのかもしれません」
時空新聞をそっと自殺志願者に見せると、自殺志願者は嗚咽しながら号泣した。

「新人!今日は一杯付き合え、俺たち二人で人生の厳しさを教えてやる。な?そうだろ?」
強靭な手練の肩に担がれた自殺志願者は、新人の背中を強く叩いた。
新人はよろめくと苦笑いをした。

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