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放任主義と過干渉

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン、キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。

2限目の授業が終了し、5分間の休憩時間が始まった。

たくま「なあなあ、ちょっと聞いてくれない?今日さ。俺遅刻したじゃん?」

中学2年になった(たくま)は、後ろの席にいる(かいと)に椅子を跨がり向きを変えて話しかける。

かいと「別にいいじゃん。遅刻ぐらい。なあ」

(かいと)は筆箱を机に終いながら、隣の席にいる(ひろせ)に話題を振った。

ひろせ「あ~」

(ひろせ)は二人の顔を見ながら、気のない返事を返した。

たくま「いいから聞いてくれよ」

(たくま)は二人を掴みかかるかのように身を乗り出して二人を引き止めながら、今朝起きた話しを始めた。

★☆★☆★☆

(たくま)が、勢い良く階段を走り降りて来た。

(たくま)は、2階建の一戸建て持ち家に住んでいて、それなりに裕福な暮らしをしている。

(たくま)が階段から降りてくると、一人で食事をしている父親に目が止まる。

たくま「んだよ。起こせよ!遅刻じゃねえか」

たくま父「自分で起きろ」

父親はそっけなく返事を返すのを聞きながら、(たくま)が怒りながら、ダイニングに足を運ぶ。

たくま「俺の朝飯は?」

たくま父「自分で作れ」

たくま「たっくっ」と言い、(たくま)はパンを一切れキッチンから探しだし口に加える。

たくま父「甘ったれんじゃねえぞ。いい加減、なんでも自分でやれ。俺だって忙しいんだよ」

パンを口に入れている(たくま)を見ることもなく、自分のやるべきことを終えた父親は玄関へと向かう。

たくま「忙しって、お前だって掃除ぐらいしろって」

たくま父「自分でやれよ」

父親の後ろ姿に(たくま)が、怒鳴るが、父親はそっけない態度で回答した。

たくま「お前の周りを言ってんだよ!自分で掃除しろ!」

バタン!

父親は、(たくま)の声を無視するように扉を閉めた。

★☆★☆★☆

たくま「マジでムカついて、ちょっと切れちゃってさ。あいつ何もしねえんだぜ。最悪じゃね?」

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン、キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。

休憩時間が終了した鐘が鳴った。

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン、キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。

3限目の授業が終了し、5分間の休憩時間が始まった。

(かいと)が後ろからツンツンと(たくま)を突きながら、振り向かせ話しを始めた。

かいと「お前なんて羨ましいよ。俺なんてさ。朝からうるさくってさ」

★☆★☆★☆

ガチャ。(かいと)の部屋に、母親が入ってきた。

かいと母「かいと!起きなさい!遅刻よ」

かいと「遅刻じゃねえよ。起きてるから。勝手に入ってくんなよ!」

かいと母「ハンカチ持った?ちり紙持った?教科書間違えてない?あ、そうそう。これも持って行きなさい。辞書よ」

(かいと)の母親が、何処から取り出したのかわからない古い辞書を差し出してきた。

かいと「いらねえって、そんなの重いだけだし、スマホあるし」

かいと母「何言ってるの?スマホ取り上げられたらどうするの?アナログも大事!」

かいと「いつの時代だよ!」

(かいと)は、母親が部屋の入口に仁王立ちしている所を、すり抜けながらリビングへと向かった。

かいと母「朝ごはんちゃんと食べて行きなさいね」

後ろから母親の声が追いかけてくる。

かいと「えぇ、いいよ。お腹すいてないし」

かいと母「ダメよ!何言ってるの?朝が大事って成功哲学にもあるでしょ」

かいと「いや、知らないし」

(かいと)は見たいテレビが有るわけじゃないのに、テレビのスイッチを付けて音量を上げた。

かいと母「じゃあ、これ!この本に確か書いてあるから、ちゃんと読んで」

母親はまた、何処から持ってきたのか分からない本を目の前に差し出してくる。

かいと「いいよ」

(かいと)は、手で本を振り払い、テレビが見えないとジェスチャーで伝えた。

かいと母「ダメよ!ちゃんと食べて行きなさい。まだ時間あるんでしょ」

かいと「あるけど、いいよ」

かいと母「私が作ったのに。食べたくないっていうの?味が嫌い?他のがいいの?何なら食べてくれるの?」

母親が(かいと)の前で突然泣き出し、目の前で座り込んだ。

かいと「泣くなよ、そんなことで。食べればいいんだろ。分かったよ。食べるよ」

(かいと)はしぶしぶダイニングのテーブルに並べられている料理に目をやりながら、席に付いて食べ始めた。

かいと母「私は別に無理に食べさせたいわけじゃないのよ。わかって。かいとの為を思って」

かいと「分かってるって、じゃ、食べたし、そろそろ時間だから行くよ」

(かいと)はカバンを肩に掛けながら洗面所へ行き、歯を磨き始めた。

かいと母「忘れ物ない?ハンカチ持った?ちり紙持った?」

かいと「もう。持ったよ。行ってきます」

かいと母「行ってらっしゃい。早く帰ってくるのよ。寄り道したらダメよ」

バタン

(かいと)は、最後の母親の声を聴くこと無く、扉を閉め学校へと向かった。

★☆★☆★☆

(かいと)は疲れるだろうというジェスチャーをして、(たくま)と(ひろせ)に語り聞かせた。

かいと「朝からマジ疲れるから」

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン、キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。

休憩時間が終了した鐘が鳴った。

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン、キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン。

4限目の授業が終了し、給食の時間が始まった。

かいと「で、お前んちはどうなんだよ。ひろせ」

前の休憩時間で二人の話を聞いていた(ひろせ)は、机を給食時の席の位置に変え、給食を運び、食事をしながら、今朝起きた話しを思い出していた。

ひろせ「俺の家はさ」

かいと、たくま「おそっ」

★☆★☆★☆

ベッドで寝ている(ひろせ)の肩を父親が揺らしていた。

ひろせ父「おい。そろそろ起きろ」

ひろせ母「ほっておきなさいよ。自分で起きるわよ」

朝食の支度をしているキッチンに居る母親から(ひろせ)の部屋が見える。

ひろせ「ん?あっ、ありがとう」

(ひろせ)は寝ぼけた状態で、ぼんやりと起きだし、カバンを引きずるように持ち上げ、ダイニングへ向かう。

ひろせ母「忘れ物ない?」

キッチンから母親に声をかけられると

ひろせ「ないと思う」

覇気もなく(ひろせ)は答えた。

ひろせ父「おい。こんな所に筆箱あるぞ」

(ひろせ)の部屋にいた父親が、勉強机の上にある筆箱を見つけた。

ひろせ「ん?忘れるとこだった。ありがとう」

(ひろせ)は寝起きの為か、まだぼんやりとしている。

ひろせ父「ほれっ」

そんな(ひろせ)を知ってか知らずか、父親は筆箱を(ひろせ)目掛けて投げた。

筆箱は大きな音を立てて床に落ち、中身の一部が飛び出した。

ひろせ「うわっ。投げるなよ!」

(ひろせ)は、びっくりして目を覚まし、飛び散ったら筆箱の中身を拾いながら鞄にしまった。

ひろせ父「そんぐらい受け取れ!」

ひろせ母「お父さん、何処投げてんのよ。もぉ」

ひろせ父「こんぐらい受け取れなくてどうする?いい加減目を覚ませ!」

ひろせ「もうとっくに目を覚してるよ!」

ひろせ父「嘘つけ!」

(ひろせ)は顔を洗い、父親の言葉を背中で受けた。

ひろせ母「朝から下らない喧嘩してんじゃないわよ。はい。二人共、朝食食べてって」

母親は朝食をダイニングに準備し、二人を呼んで、椅子に腰を下ろした。

ひろせ「いいよ。あまりお腹すいてない」

洗面所にいる(ひろせ)が、顔を拭きながら応えると、父親は素早くダイニングに腰を下ろし、朝食を自分の前に引き寄せ始めた。

ひろせ父「やりぃ~、俺が頂きます。お前になんか食べさせない」

ひろせ「なんか腹立ってきた。お前に食わせるぐらいなら俺が食う!」

(ひろせ)は、ダイニングのいつもの席に腰を下ろすと、父親に奪われた皿を自分の席に近寄せた。

ひろせ母「あんたたち、子どもね。いいわよ。食べたくないなら食べなくっても。そんな喧嘩するんでしたらお父さんも食べなくてよろしい!」

父親と(ひろせ)からお皿を取り上げようとする母親の手を静止して、父親と(ひろせ)は食べ物に手を付け始めた。

ひろせ「食うって言ったら、食うからいいんだよ」

ひろせ父「素直じゃねえな」

ひろせ「お前に似たんだよ」

(ひろせ)は、父親に一瞥し、朝食を食べ終えると、歯を磨きそそくさと学校へ向かうため玄関に歩み始めた。

ひろせ「行ってくる」

ひろせ父・母「行ってらっしゃい」

カチャ

(ひろせ)は、二人と軽く挨拶を交わしてそっと扉を閉めた。

★☆★☆★☆

話が終わる頃には、給食を食べ終えていた。

ひろせ「まあ、こんな感じだけど」

(ひろせ)は、その言葉とともに立ち上がり、食べ終えた食器を片付け始める。

その後ろから(たくま)と(かいと)が食器を片付けに着いて来ると

たくま、かいと「羨ましぃ~」

と二人は後ろから(ひろせ)を突っつきながら茶化している。

ひろせ「何処がだよ」

(ひろせ)は少し鬱陶しそうに体をよじりながら、食器を片付け、片付けが終わると自分の席に戻った。

たくま、かいと「俺らよりなマシだよな」

後ろから付いてきていた(たくま)と(かいと)も食器を片付け席に戻ると、顔を見合わせて(ひろせ)に言った。

ひろせ「何処がだよ」

(ひろせ)は不思議そうな眼差しで二人を見つめる。

たくま「じゃあ、家交換するか?俺んちみたいなのがいいのか?」

ひろせ「それはちょっと」

かいと「じゃあ、家はどう?」

ひろせ「それもちょっと」

たくま、かいと「お前、贅沢だな」

ひろせ「何処がだよ。なんていうかな?もうちょっとバランスが取れてるのがいいよね?」

たくま、かいと「そうそう。それそれ」

3人「はぁ……難しいな」

こうして、3人の悩みは尽きないのであった。

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