「さようなら」君が書いた置き手紙
君は戦っていた。
毎日、来る日も来る日も。
そして疲れ果てたんだね。
高校3年、卒業して新しい門出が期待されていた冬。
君は決断を下したんだ。
この殺伐とした世界に牙をむくように。
「さようなら」と君が書いた置き手紙は、まだ誰にも読まれてはいない。
君がそこにいた冬が、君がここまで生きた冬が、無かったかのように。
君は靴を脱ぎ捨てたんだ。
それもこの夏に新しく買い替えた、まだ新しい靴を。
君が新しく着替えた服は、君の体には少し大きく感じていて、それなのに何処か窮屈で息苦しかった。
君は一生懸命、新しい自分に生まれ変わろうと、新しいものに囲まれようとしていたんだ。
成長とした体と、心はどうしてもチグハグで、君を覆っていた新しい服も靴も、君には不釣り合いに感じていた。
君はそんな自分に「さようなら」と伝えた。
新しい旅立ちに、新しい靴も新しい服も必要じゃないと気がついたから、君は旅立つ前に、靴を脱ぎ捨てた。
温かい海の近くで。
「さようなら」
靴も服も脱ぎ捨てて。
そこには生身の自分が立っている。
これから始まる新しい時代を歩くには、新しい靴はいらない。
必要なのは温かい海と浮き輪だけだ。
ブルー・オーシャンに泳ぎに行こう。
君は裸のままで海に飛び込んで、少し浮かれるかもしれないけど、長い航海が君を沈めさせるかもしれない。
忘れないで、君には浮き輪がある。
沈まない心があれば、長い航海にも打ち勝てるでしょう。
それでも、冷たい海には近づかないように。
戦いに疲れたら、戦わなくていいという事を思い出して。
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