脆弱系魔術_その理論と実践__2_

脆弱系魔術 ~その理論と実践「第二話:森林性出現憑依型のケース」セクション1

護符使いが席を外してお面を付けると、誰かが一時の宿場に入ってきた気配を感じる。背中越しに弟子と依頼主が入ってきた1人と会話を始める。
依頼主の知り合いなのだろう。少し揉めているようだ。
「繋がりました。ご報告をどうぞ」
お面の視覚が中央機関のロビーを映し出す。そこには鏡に映された私がいる。
私ではない、このお面を付けているのは別の人間だ。
この感覚はどうもなれない。まるでそこに居る自分のコピーに対して、鏡に向かって独り言を発しているかのようで、私でない誰かに聞かせているのだ。
もう本当に嫌だ。
今回の騒動は魔物の仕業ではなく、サエワタリ草の副作用がもたらした悲劇であり、この村の復興を目的とした実験でした。調査中に村で小規模な火災が発生し、村人に多少の怪我人が出しましたが皆無事です。サエワタリ草患者の回復にはモトドオリ草の処方が必要と思われますので、手配の方お願いいたします。また、この村の経済はとても疲弊しており早急な政策による復興が必要ではないでしょうか。今回の成果として護符が患者にかかった病の時期を特定することに成功した事は大きいと思います。魔物との戦いに利用する鬼符とは異なり……
「……だと言うことです」
護符使いの通信を受信した通信係が、召喚士に経緯を報告する。
召喚士は、抱えていた頭を重そうに持ち上げた。
「あれだけ一般人に危害を加えるなと言ったのに……」
通信係が「危害?……」と首をかしげる。

ここから先は

714字
この記事のみ ¥ 250
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

いつもサポートありがとうございます♪ 苦情やメッセージなどありましたらご遠慮無く↓へ https://note.mu/otspace0715/message