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目隠しパラダイス(2)

バタッ!重厚な扉の開く音。風俗嬢に連れられている時は気にも止めなかったことだが、後部座席の広さといい、乗り心地といい、富豪が乗るに相応しい上品な車だということが感じられた。

甘い香りを漂わせながら私の前を横切り、シートベルトを外す。

「どうぞ、こちらへ」と優しい声を投げかける女性に、手を取られ車を降りた。

まるで社長秘書を思い起こさせるような、気配りの効いた彼女の手に引き寄せられ、私は一歩一歩、歩みを進める。

暗がりの中、頼りになるのは彼女の手だけだ。私の手は緊張も伴い汗でベタベタになっているというのに、彼女はしっかりと私の手を握ってくれていた。

車から降りてからどれだけ長く歩いただろう。右へ曲がったり、左へ曲がったり、階段を数段登ったり、階段を数段降りたり、順番はもう定かではないが、方向感覚は既に失われていた。

程なくして、ここでお待ちくださいと、私を一人残し女性が姿を消した。

不安しかない。誰かに見られているのか?ここが何処なのか?周りに何があるのか?全くわからないのだから・・・

少し離れたところから「ギィギィギィギィ」と重い扉の開く音が聞こえてきた。とても大きな扉のようだ。ここは夢にまで見た西洋風のお城なのだろうか?そんな想像が出来るほど大きな扉に思えた。

突然、私の手を握る手に、ハッとなる。身を引いてしまった。

「申し訳ございません。お手をどうぞ」先ほどの女性が優しく私の手を握り返した。

まったく、存在感がない。遠く離れた時物音もせず離れたかと思うと、物音もせず近づいてきたのだろう。要するに扉を開けてもらいに行くのに私から一時的に離れただけだったのだろうが、この空白の時間は、宇宙に放り投げられたかのような大きな不安を、私に与えていた。

目隠しをされてからどれぐらい経っただろう。喉がカラカラだ。車での移動と緊張も相まって、私の口の中はカッピカピに乾燥していた。

「あの~、今、何処に向かっているのか存じませんが、目隠しを取る休憩を先に貰えませんか?トイレにも行きたいのですけどもぉ~」

おそらく、何処かの建物に入ったかのように感じて、私は手を引いている女性にお願いした。

「休憩所の手前にトイレがありますので、私がサポート致しますので、どうぞごゆっくりになさってください」

私は驚き、女性と歩むスピードを止めて、立ち止まった。

「え?え?何?そ、それはちょっと・・・目隠しを取って一人で行きたいのですが・・・」

女性は私が立ち止まるのを拒絶するかのように、手をそっと引きよせ腕を絡めて歩くことを強要した。

「さあ、行きましょ♡大丈夫♡私も慣れたものです♡いつも見ていますから♡」

・・・・
えぇ~~どぉ~いうことですかぁ~~

本当に女性?男?ニューハーフ?それとも、ここではそれが一般的で仕事で慣れたってこと??腕に絡む感触、甘い香りの香水、肘に当る胸の感触は女性だと、私の脳が認識していた。

私の脳内で勝手に作る顔は美人タイプの女性でしか無く、そんな女性のサポートを受けてトイレに行かなければならないなんて、初めから衝撃的過ぎた。

「うっ、嘘でしょ!休憩所では何が出来るんですか?」

「目の保養です」

「え?それだけ?」

「はい」

そんなあ~~~~~~~

ここは天国か、はたまた地獄の一丁目か・・・


私の妄想は膨らんだ。

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