見出し画像

珍妙スマホおばあさんに遭遇した話

退勤後の駅にて。

僕の前方で突然、おばあさんがスマホを横に構えた。なんだ、僕の肖像権を侵そうというのか。因みにどれくらい前方かといえば、フシギダネの「居合い斬り」が届きそうな距離。

おばあさんはかなり必死な様子だった。一心不乱にスマホのカメラをあらゆる方向に向けていた。更にズームも繰り返していた。面白い動きだった。

ピースでもしてやろうかと思った矢先、スマホを横に構えたままおばあさんは駆け出した。さながら芸能人にゴシップアタックを仕上げるテレビクルー。

おばあさんは電工時刻表の前で立ち止まった。未だに彼女は親指と人差し指でのズームを繰り返している。そのスマホ、そんなに望遠なのか。

面白そうなので観察していると、どうやら彼女は時刻表を拡大して見ている事がわかった。老眼鏡代わりにスマホのカメラをズームして使っている。なるほど。

ようやく知りたい情報が分かったからなのか、おばあさんは自分の電子老眼鏡を仕舞い、さるホームへ向かっていった。スマホ落とさなくて良かったね。

多分あのおばあさんは普段、スマホを使いこなせていないだろう。使ってもラインと電話くらいのはず。そんな人でも必死になると工夫をこらして問題を解決する。おもしろい。

彼女は普段からアレをやっているのか、それともその場で思い付いたのか、僕は帰路で少し気になった。出来れば普段からやっていて欲しい。あの大変面白い動きを各所で披露して、僕のような通行人に一笑を是非提供して欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?