Twilight Skyという曲に救われた話

Twilight Skyという曲に救われた話をしたいと思います。


この曲は、アイドルマスターシンデレラガールズの多田李衣菜のソロ曲だ。
簡単に言えば、今はまだ未熟だけど、成長していくアイドルの曲。
もう少し詳しく言えば、ロック好きを公言しつつも、にわかと言わざるを得ないような女の子の曲。


初めてこの曲を聞いたときは、りーな(多田李衣菜の愛称)らしい、シンプルで難しくないロックな歌だな、と思った。(少しバンド経験があるので演奏の難易度がなんとなくわかる)
でもその後、歌詞を意識して聴いたとき、この曲はりーなにしか歌えない曲だと思った。


この曲の歌詞は、夕暮れから夜明けまでを描写している。その中で、変わっていくこと、進んでいくことの切なさや心細さ、そして楽しさと素晴らしさを歌っている。


曲の中には、中途半端を表現するような言葉がたくさん出てくる。言わずもがな、りーなの「にわかさ」のことだ。でも、どの歌詞でも、その中途半端さを肯定的に描写している。


「どこまでも広がるグラデーション」として夕暮れ空に喩えたり、「才色兼備良いけれど三日月も綺麗だよね」と欠けていることを良い方向に捉えたり。

「賛否両論いいじゃない」「悪口雑言気にしない」といった歌詞もある。このあたりからは、自分を受け入れてもらえないことがあってもへこたれない強さを感じる。

「清廉潔白だけじゃない」という歌詞もあって、アイドルがそう歌うのを好ましく思わない人がいるかもしれないが、後ろ暗いことが人生において多々ある私にしてみれば、りーなを血の通った存在にしているフレーズだ。

そして歌詞は次のように続く。


巧く歌うんじゃなくて
心を込めて歌うよ
世界でたった一人の
君に伝わりますように


中途半端でも、ときに失敗しても、周りに受け入れてもらえなくても、そのときの精一杯を生きている。
自分という存在はたった一人だと、りーなは歌っている。

にわかなロック好きで、方向性もブレがちで、でも自分に正直なりーながそう歌ってくれたことで、私は救われた。



私には好きなものがたくさんある。
でも、それこそりーなじゃないが、どれに対してもにわかだった。働き始めてからはより、好きなものに対して全力を傾けてはいられなかった。

音楽を聴くのは好きだけど最近はライブにもあまり行っていないし、新しいアーティストを発掘したりもしていない。
本は読みたいと思って買ったものが積んである。好きなゲームもストーリーは読みきれない。
色々な洋服を着るのも好きだけれど、憧れのハイブランドを買うには少し勇気が出なくて、収入を言い訳にしたりしている。


そんな中途半端だから、他人に好きなものを否定されたり、自分の好きの熱量を他人と比べてしまったりしては、自分の好きなものへの気持ちに疑問を持って、呆然と立ち尽くしてきた。大学時代は特に、そんなことばかりだった。


文学部では、好きな作家についてあんなのは文学じゃないと切り捨てられて(確かに大衆小説家だった)、自分のような似非文学少女はこの学部に入るべきではなかったと思った。
出版サークルでも、編集部のブラックぶりを見聞きしながらも果敢に出版社へバイトやインターンに行くサークル員たちを見て、夢の強さが違うことを感じた。
バンドサークルでは、好きなバンドについて中高生の好みだねと勝手に評価されたり、可愛いと思って買った服を変だと笑われたりして、自分の好きなバンドを演奏したり、好きな服を着るより前に、周りに受け入れられるバンドや服装を考えてしまうようになった。


他人にどう言われようと思われようと、好きなものは好きなはずなのに。
これを好きなのは趣味が悪いのだろうか。この程度で好きと言っては白い目で見られるのではないか。
そんなことばかり気にして、自分の好きなものを語るのが怖かった。
自分の夢や好きなものを楽しそうに語って、表現して、それを受け入れられている人たちが妬ましかった。


そのまま、ダメ元で出版社を受けることもなく(受けたところで全落ちだっただろうが)、どうにか採用された会社で私は事務職員になった。


諦めきれないような夢を見つけることもなく(「夢」というのはなりたい職業に就くことだけを指すものではないとも思うが、それはまた別の話)、胸を張って語れるような趣味もなく、なんで自分はこんななんだ、と落ち込むことがよくあった。


そんなときに、Twilight Skyを聴いた。アイドルの曲に救われることは多々あったが、こんなに、今までの自分と今現在の自分を認めてくれたように感じたのは初めてだった。


自分なりに、好きなものは好きだった。今も昔も。
あの時の好きだった気持ちを否定しなくていいし、数年後には飽きてるかもしれない、もしかしたら黒歴史になっているかもしれなくても、好きなものは堂々と好きと表明していい。
この曲が、りーなが、そう思わせてくれた。



開けゆく東の空で 目覚める夢の続きが 
たとえ違ったとしても 君の歌聞かせて

一度きりの旅だから 自分だけの旅だから 
好きなもの集めるんだ 間違ったっていいんだ



憧れた夢を途中で諦めたけれど、中途半端なりに色んなことを経験して、考えて、感じて、今の私がいる。

他人のことを気にして、好きなものを好きだと思うことを躊躇したりしてきたけど、本当の自分の気持ちをありのまま受け入れていい。

「あなたがあなただから愛しているよ」

りーなはそう歌ってくれた。




私と同じように、この曲に救われた一人はたくさんいるだろう。
だから、My Best Cinderella songsでこの曲が16位になったのだと思う。

10周年記念ツアーのファイナル公演、あのイントロを聴いた瞬間に身体が震えた。

多田李衣菜に声を吹き込む声優さん、Twilight Skyを生み出してくれた作曲・作詞家さん、そしてあのライブに関わった皆様、ありがとうございました。


私がこんな風に書かなくとも、この曲の素晴らしさを語った人はすでにたくさんいると思う。
でも、どうしても自分の言葉で、この気持ちを形にして残しておきたかった。

拙い文章だけれど、精一杯の気持ちを込めました。


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