アーモンドチョコ

頭を使う作業、それも全く気乗りがしない作業をする時、私はよくアーモンドチョコを食べる。
今日もその手で、なかなか手をつけられなかった資料作成を終わらせた。
私にとってアーモンドチョコとは、ストレスを軽減する頓服薬のようなものなのだ。

あの日、新宿駅始発の電車で私の目の前に座ったサラリーマンにとっても、アーモンドチョコは同じように大切なものだったのだと思う。

疲れ切った顔をして電車の到着を待っていた男性は、ようやく座席に腰掛けると、表情を緩めてコンビニの袋からアーモンドチョコを取り出した。

封を開け、取り出しやすいように箱を傾けた瞬間。
無情にも、アーモンドチョコの過半数は、軽快な音を立てながら電車の床に転がり落ちた。

その瞬間の男性の顔。誰一人笑い声をあげない静寂の中、粛々と小粒を拾い上げてコンビニの袋に入れていく背中。

アーモンドチョコを食べるたび、その悲しい光景が思い出される。


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