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りんりんと

短編ドラマシナリオ集。
この中の「りんりんと」というドラマのシナリオが好きだ。年老いた母を、自分や家族の都合により仕方なく介護施設へ預けるというリアルを『姥捨』に見立てて、罪悪感を感じる息子。母が息子に呟く「母さん、本当に生きてていいのかい」の一言を軸に据えていると脚本を書いた倉本聰氏が語っている。根底に、わたしのことは気にしなくていいよという親の愛が見える様なこの一言が最後まで主人公の息子の胸に突き刺さる。痴呆なのか、本音なのか、優しい嘘なのか。
姥捨に行く息子だが本当に捨てられるのは息子の方じゃないのかというテーマ。
母役に田中絹代、息子役に渡瀬恒彦。北海道から離島にある施設へと向かうフェリーのなか、ほぼ、二人だけの会話で繰り広げられる物語。読むだけでもグッとくるものがあるけれど、ドラマで観てみたかったなあ。余韻を感じたいところで船の汽笛指示をいれたり、ドラマタイトルの文字が入るト書きがあったりと、さすがなのです。読むだけで渡恒彦の声も聞こえてくるから不思議。

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