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野いちごの季節

ゴールデンウィークを過ぎるとソワソワする。待ちに待った野いちごの季節だからだ。
逃してはならぬと心に決め、去年採れた場所や新たに採れる場所はないかと車に乗っていても路肩ばかりに目がいく。
毎年同じ場所で採れるとは限らない。薮になって実がならなくなることは年々増えている。今年も少しだけ。ジャムにすると小瓶に半分しか入らなかったけれど、県外に住む長女のところへ持って行こうと思った。
よく晴れた昼下がりに家を出て、いつもは通らない道を走る。高速道路は使わずに下道でのんびり行こうと思ってのこと。すると家近くの場所で、たくさんの赤い実を見つけた。陽の光に照らされてキラキラと光っている。
車をとめ、辺り一面に成っていることを確かめ、後日とりにいくことにした。
心の中はしめしめである。
長女の家に泊まり帰ってきた翌日、つなぎの作業着と長靴、帽子に手袋、竹籠を持って出陣。
1時間汗だくになりながら夢中で野いちごを摘んだ。カメラも持っていたが、撮るより摘む手の方が早かったし止まらなかった。
防災無線から流れる12時の音楽とともにお腹もぐうーぐうー鳴っているが赤い実が目に入る限り手は伸びた。
帰宅してすぐに水洗いし、虫がいないか一粒ずつ確認して鍋で煮る。
アクを取り、煮詰めると真っ赤なジャムが出来上がった。
朝半分食べた食パンの残りをトースターで焼き、ジャムをつける。
甘酸っぱい初夏の味が口の中に広がった。

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