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いい塩梅の投資でグッチに磨きをかける。〜趣味のオートバイの話 1

細く長く楽しむ趣味をつきつめていくと、道は狭く鋭くなっていく。
遠く彼方に霞んでいた「マニアック」の領域に、少しずつ足を踏み入れるってやつだ。

深く知ると、やっかいなことが起こる。中途半端を放っておくことができなくなる。

趣味ってそんなものだと思う。

湯水のように資金を生み出す小槌も持っていなければ、稼ぎもたかが知れている脛が細った我が身では、気持ちがはやっても限界の壁はあまりに近い。

さらにやっかいなのは、お金をかけようと思えばかけられる趣味であるということだ。だから「ああしたい」「こうしたい」に、いちいち制動がかかる。
せめぎ合い。

趣味は、オートバイ。
雨の日はバイクが濡れるから乗らない。
自転車でまかなえるところは極力自転車を使うと決めている。
こんなだから、年間のバイクの走行距離は自転車より短い。

それでも、降りられない。
それが趣味ってやつのアヤウイところだ。

さらにやっかいなのは、溜まってしまうということだ。いわゆるコレクション。

愛でて楽しむには少しばかり大きなコレクションは今のところ3台。フリークからすれば鼻息で吹き飛ぶほどの数。

この3台、まとめても普通車1台の所有と比して負担ははるかに軽い(バイク優先で車は手放した。趣味で乗るバイクと違って実用と捉えた車の年間走行距離1000キロは、あまりに無駄だった。山手線沿線住まいは、公共交通手段的に優位で、プライベート交通手段たる車の維持費は負担になりこそすれ、生活のリズムをはずませてくれることはあまりなかった)。
それでも3台である。比較論でたかが知れているとはいえ、突き詰めると限りを知らないところへと突き抜けていきそうで怖い。

1000ccと750ccと400cc。
順に、アメリカ製とイタリア製、そしてヤマハ製。

今回、どうしても趣味ごころの疼きがやまなかったのが、イタ車のMOTOGUZZI(モトグッチ、モトグッツィと呼ぶ人もいる)というメーカーのもの。

たまにGUCCIと関係あるの? と訊かれることがあるが、まったく関係ない。小林さんと大林さん、どこか似ているけどまったく別人であるのと同じだ。

さて、不満の虫が地団駄踏んだのが、音であった。
サウンドにひと方ならぬ思い入れがあるこの身は、意識的にペンネームに体を表そうとしたほど。楽器に音楽再生機器に、工芸品のたてる音、自然音。
どれも好き。
そこに、趣味のオートバイが組み込まれることは自然の成り行きだった。

音を楽しみたい。
なのにMOTOGUZZIときたら(車種はV7 STONEというもの)、排気量が750ccもあるというのに、排気音がまるでカブだった。いま、カブのほうがタッタッタッと明るく元気。対してこちらは、ジェントルという名目で大事なものまで包み隠してしまった情けなさ。
迫力欠如。

やっぱりこう、なんというか、威厳を見せてほしいじゃないですか。
オートバイの造りをチェックすると、部品がいちいちでかく、丈夫であることがわかる。扱いもわりと大雑把でかまわないところがあって、デリカシーに欠けているけど、質実剛健。レースに出るようなスポーツ・バイクではなく、つまりはイタリア製でっかい実用車ってとこ。
本国イタリアではこれでピザの配達していてもおかしくないのじゃないかしら。
こんなだから、レーシーとか、ハーレーみたいな我が物顔で存在感のゴリ押し「どけどけ音」とは別領域の道産子型縦置き2足走行類としたのやもしれぬ。

それでもバイク・フリークからすれば「初めて見た」「マニアック」なバイクとなる。

さて。
音を変えるには、マフラーを交換することだ。
だけど、昨今の規制に次ぐ規制で、下手にマフラーを替えると車検に通らなくなってしまう。世界の有名なアウターパーツを手掛ける老舗マフラー・メーカーのもので、車検対応のタイプもあることはあるが、音質と音量の変化は満足できるものではなかった。

そうじゃなくって。
もっと威厳がほしいのだ。のだ。と自分に対して駄々をこねた。のだ。

これだけマニアックなバイクのパーツなうえに、バイクの年式が関係して、手に入れようにもモノが市場に見当たらない。
たまにヤフオクで出品されてはいるが、「いいね!」を送りたい品物は、たいがい5万円を大きく上回っている。ポチする手が、クリックの一歩手前でフリーズする。
合わせて、これが中古品の値段か? と思わず呆然の息が落ちる。

だから本国イタリアのアウターパーツ専門メーカーから直接仕入れることを考えた。中間マージンを省けばその分、リーズナブルな価格になるからね。
で、連絡。
ユーロ表示は、日本円換算でおよそ7万円だった。この価格で新品が買えるなら、とほくそ笑んだのだが、目論見は空振りすることになる。
親切にも「日本に代理店があるから、そっちに連絡とってみて」と返してくれたので、嫌な予感を抱えつつ該当ショップのホームページをチェックすると、確かめてみると、、、。
えっ? 9万7000円? おんなじものが、きゅうまんななせんえん! エキパイの先のわずか50センチほどしかないパイプの加工品が、ほぼほぼジューマンエン!
コンビニで肉まん買うよなわけにはいかなかった。

なにかほかに手はないか?

諦めるか。
それとも先に進むか。
ギャンブルはいっさいやらないけど、負け続ける人の意地と同調したような気がした。
「ここでつぎ込まないでどうする!」

なんだか追い込まれたような気がした。

さて、どうしたものか。

(続く)

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