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ノスタルジック危機。

 サクマ式ドロップス(佐久間製菓)が消えてしまう。『火垂るの墓』で懐かしさを喚起された世代が終わると、次の世代はそれを「前時代的菓子」と呼び、味を想像することしかできなくなってしまう。映画は前時代的なものでも映写機が回れば代を超えて受け継がれるが、味覚はそうはいかない。映像で見せることはできても、実物が引き継がれないと味がわからない。
 次の次の代くらいまでもつように、箱で買いだめしとこうか。だがモノがモノだけに、溶けて缶の中でくっ付きあってしまったら、手の施しようがないことになってしまう。
 
 これは現代の一大事。危機的状況。
 
 キキ繋がりで、1枚の絵を描いた。テーマは、どんなピンチに瀕しても、諦めてはいけないということ。キキ、キミには強い絆でつながった信頼のおける仲間がいる。
 
 サクマ式ドロップスは2023年1月まで営業、品物がなくなり次第補充はせず売り切れとなる。
 そこに、救済の手を伸ばす仲間はいないのか?

 どうやら創業家の血筋を引く『サクマ製菓』(社名がカタカナ)は復興された別会社のようで、サクマドロップス(「式」という漢字が入っていない)は今回のニュースとは関係がなく、製造も販売もこれまでどおり続いていくという。『火垂るの墓』のサクマ式ドロップス、サクマドロップスは『鬼滅の刃』とのコラボ。似ているようで違うのは、世の中の「本家」だの「元祖」だのの暖簾の争いを連想させるが、なくなってしまうのはやはり寂しい。名画として未来に上映される『火垂るの墓』を観るこれから生まれてくる子供たちは、サクマ式ドロップスが登場するシーンで、「鬼滅の刃で見たキャンディ」を思い浮かべてしまうのだろうか。

 ノスタルジックが改ざんされていく。これは由々しき危機である。

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