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楽器に支えられて。

『あの歌はもう歌わないのですか』なんて問わないで。あの歌もこの歌も、歌という歌はもう歌わない。歌う自分が恥ずかしく、聞く側思うと情けなく。要は音痴だから。人様の地獄耳にだって、これっぽっちも入れたくない。歌唱は恥部。
 
 だからといって音楽を捨てたわけではない。捨てられたわけでもない。救ってもらったのだ。声を出して楽しむのでなく、音で楽しむ者たちに。

 ずっとそばに楽器がいた。リコーダーにハーモニカ、カスタネットにトライアングル。昨今知った手笛では、未だ音が出せないよちよち歩き。ものになるかは知らないが、それでも手ぶら楽器のなんと魅力的な響きよ。

 歌わなくたって、歌えなくたって、音楽がある。楽器はアタシが転ばぬための杖。

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