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井の中のワカズ(話数)。

 僕のそばにはいつだって井の中の蛙がいた。つまり蛙と一緒に井戸の底にいるということだ。
 蛙はことあるごとにコトの成り立ちや成り行き、顛末を話してくれる。亀の甲より蛙の【講】。僕には彼から教わることが世界そのものだった。
 こうした話の流れだと、賢明な読者諸氏に先を越される。結末に先まわりされ、物語の終わりで待ち伏せされる。
 飛んで火に入る夏の虫にはなりたくないから、天邪鬼の僕は、越された先に辿り着く前に、脇道へひょい。
 
 逃げる。
 
 逃避行の先は……。

 蜘蛛の糸だと心許ないが、月の意図だとすがる気にもなってくる。
 
 絵のファンタジーは縦横無尽の絹の糸。そして月でも背負いきれないほどの星の数。

【暗く湿った井戸の底から、期待の光明を夢見て絵を描く】

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