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アクセルを踏む足に力を込めて。

 年が明けてまだ半月しか経っていないというのに、日照感覚でいえばとうに朝の透明感が消え失せ、濁りの混じった人間感情の参差錯落しんささくらく、有象無象の渦巻く欲望、その渦中に午前中から辟易のため息こぼし、一縷の望みのランチを夢みる現実逃避ーーそんな時間帯によく似た空気感に包まれている。昨今の夏の早咲き、梅雨を蹴散らし秋をも覆い尽くし、灼熱が年の瀬まで続く気候の妙が背中を押しているわけでもあるまいに、暖機運転とっくに終えて、いきなり年末までぶっ通しの高速走行にシフトした感覚だ。
 
 本日1月15日は暦を読むと小正月とある。風流を胸に感情局面をひらいていけば、楽しかったデートも終わり、名残を惜しんで恋人を振り返り合うーーそんな雅趣で切ない情感が浮かぶ。
 
 なのに。
 
 たい焼きの皮は薄いほど喜ばれる。そのたい焼きにあやかって、襟を正す年始と過ごしてきた1年を労う歳末の包み衣を薄くしてしまったというわけか。高級食材の売れ行きと視聴率の出来高には貢献するが、その他の経済活動が休止する年末年始は、『経済循環こそ幸福』社会において、無用の長物と見限られたの知れないね。それでも高級食材業界とテレビ業界への忖度があって、ちょびっと残されているのかもしれないね。
 
 肥大したのは、実質経済を稼働する労働力の最大利用術である。恩恵は経済発展をスローガンに抱える施政者と経営者にもたらされ、もたらす者は馬車馬のように絵に描かれたニンジンを必死の形相で追いかける。

 馬車は世界レベルから取り残されてはいけないのはわかる。経済社会の便利で豊かな暮らし保持のためであることもわかる。快適さを知った者は隙間風のボロ屋には戻れないし、ポットン・トイレの跳ね返りの恐怖を再び味わいたいとは思わなくもなる。
 それは、わかる。
 このようにして、反論し難い『経済循環こそ幸福論』もまた肥大化していく。肥大化した経済の勢いは凄まじく、激流は個々の反感や反論や異議をことごとく飲み込んでいく。
 
 このようにして経済の本線に早々と合流してしまった2024。今年も例年どおり、クリスマスが終わるまで突っ走ることになるんだろうなあ。願わくば、頑張った分がきっちり返ってきますように。

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