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夜長迷路。

 もう少しで時報は霜月を知らせる。その11月、風情を打ち出せばいいものを、人のサガは何かにかこつけて人為的な意味をこじつける。蓋を開けると、抗いようのない説得力に屈服し、素直に服従するのだけれど。潮の流れに導かれ、手紙を入れたボトルが異国の地に向かうみたいにして、流れにこの身を任せ。

 なぜ11月が『児童虐待防止月間』に当てられたのかは知らない。だけど11月は『児童虐待防止月間』とされた。「児童虐待防止」とは、社会的、生物学的、経済的、肉体的、年齢的、家庭内主従関係相関図的要素を総合的に鑑みて、弱者とされる者を守っていこうとする主旨。弱者は守られるべき存在のはずなのに、わざわざキャンペーンを張るなんざ、イヤな時代になったもんだと、内面、実は呆れてもいる。当たり前の行為に、なんで呼びかけが必要なんだ? 我が身からじゅうじゅう湯気のように湧き出る疑問符も、新聞に目を落とせば、記事読んで納得、取り上げざるをえない諸般の事情が温泉湯煙のように立ち昇っている。

 まわりに対象となる小さな子供はいないから、『児童虐待防止月間』を『弱者虐待防止月間』と置き換えて考えてみた。
 弱者と定義される者は確かに存在しており、救済のお膳立てはすることができそうだ。
 だが待てよ。やってくるのは『児童虐待防止月間』であり、『虐待児童救済月間』ではない。
 うむぅ。

 秋の夜は今夜も長い。今宵もまた答えの出ない屁理屈迷路に迷い込んでみましょうか。アテのない探し物が迷路の道端に落ちているかもしれないことだし。

「弱い者いじめは一度だってしたことないじゃん」双子の弟・白猫キキ

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