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好々爺ならぬ……。
齢が重なると、人生を達観するようになると思っていた。誰もが生まれて育っていくように、成熟を過ぎて人生の坂道を下り始めると、背負ってきた責任やらプライドやら、肩に乗せてきた荷のあれこれを降ろし始めると思っていた。なのに、昨今のお年寄りときたら。
ボランティアで手伝わせてもらっている老人スマホ教室に足を運んでくれる『人生老練』生徒さん。その大半が、終盤に差し掛かり安定期を平穏無事に過ごそうと思っていた矢先に襲ってきた『デジタル革命』の波にうろたえ、藁をもつかむ思いで訪ねてくれるわけだけれども、中にはいるんだな、これが。肩に乗せた荷を降ろさず、元気に鼻を高くする御仁が。
スマホの困った相談会に「パソコンは使ってきたからわかるんだけど」と、スマホの難易度を説いてくだけの宣教師や、女性職員を狙ってマニアックな質問で困った顔を楽しみにしているワンパクジイ(爺)が。
で、今日の一件がふるっていた。連絡帳を複数端末で管理するのにクラウドを活用しているんだぜ! 自慢が、「古い端末のSIMを維持したまま、もう1枚SIMを追加するにはどうすればいいか?」と女性職員に迫っていた。
老人スマホ教室は、スマホ利用の入口でつまずいている方向けのソフトな指南役。スマホ販売店の熟練販売員のように、売るための万能な知識や納得まで持ち込む饒舌な口車は持ち合わせていない。
「それは、ですね、あの、その」とうろたえてしまうのも道理。
そこで出たひと言。「あんたのメールアドレスを教えてくれれば、問題は解決するんだけどな、ガハハ」。
これに対し、それまで押しの強さに怯んでいた女性職員、反旗を翻すみたいに態度を一変させ、断固拒否! を口にした。予想を超えた窮鼠猫噛みの反撃に、せっかく話を有利に進めていた好々爺ならぬ好色爺もたじたじ。
それにしても、だ。主導権を握って人をいいように操ろうとするなんざ、年齢が年齢だけにかわいいげがあるともとれるけど、その尽きない欲望には頭が下がる。
中にはいるんだな。こうした目的をすり替えた『あわよくば』組が。そうした人はこれからも達観の域に向かうことなく、欲望社会で培った達成感を追いかけ続けていくんだよ、きっと。
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