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トラベルもういいかい。

 軍手をはめた農家のおばちゃんから無造作に薔薇の茎を手渡されタジログように、あるいはトレイに乗せられた湯気きわだつ見るからに熱湯の取手なし湯呑み茶碗を「さあ、どうぞ」と言われてもおいそれと手を伸ばせないように、経済循環という名目や補助金のあと押しを素直に受け入れられなかったこの数年。
 もし万が一、あんなことやそんなことになったなら、研磨された後ろ指にぐさっと刺されてしまいそうだったから、先陣を切ることに躊躇ってばかりいたこの数年。
 今度の凪はだいじょうぶ? そろそろ船を漕ぎ出してもいいかしら? 座席を予約してもいいものかしら? でもって、問題は何も起こらない? 本当に、ノープロブレム?
 今度こそ本当であってほしい。
「もういいかい?」
 もういいの?

【円高の頃の海外より自粛下の国内のほうがずっと遠かったものね】


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