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カオタチ。

 あの映画でカオナシが生まれた。映画を代表するひとつの重要な顔だったのに、カオナシとはこれいかに⁉︎

【気まぐれからか、閃きからか、スターはあるとき不意に現れる】


 カオナシが生まれるその昔から、『見たか?▼▼▼▼の森』ではいろんな顔が生まれてきた。真っ白いキャンバスと絵筆さえあれば、はいかようにも創造主となれる。
 描かれる世界には、共生もあれば反駁もあった。時に重火器も登場するなど、おぞましくも穏やかとは縁遠い物騒な過去もある。

 だからといってどの回も争いを前提としているかといえば、そうではない。揺さぶりは力ではなく心情的小波さざなみのこともあるし、心の隙間に入り込まれることもある。ヴァイオレンスチックな話でも設定は度を過ぎてはおらず、負の反動をプラスにゆさぶる振り子としての機能を担わされているだけだ。

 幸いの物語に、あと味の悪いものはない。結末はそれぞれ異なるものの、明暗どちらの領域に帰着するか、ゆらぐことはない。終わってしまえば『幸せ閉幕』は、臨む者の大きな安心材料となっている。

 先般、慣れ親しんだ『三鷹の森美術館』の外周を歩いてきた。折りを見て館内も見まわりに行かなくちゃ。
 そして今度は愛知県『ジブリパーク』である。さすがに開園したてだから、予約なんて、森でトトロに出会うより困難な事態とあいなったけど、いずれ。

 画面を通して立体化ヴィジョンを想像するのも悪かないけど、形あるものと空気を共有する時間は虚がなくリアルで心地よい。その場に足を運ばなければ鮮度が保てない刺身定食みたいな生々しさで迫ってくる。
 その巻き戻せない1回こっきりの上映会では、主役の顔は来訪者たるあなたが張れる。
 映像の世界をいったん離れ、視覚からブルーライトを遠ざけて脚力使ってジブリを歩けば、これまで生まれてきた各界のスターたちが、その時々の感情を顔に乗せ、沿道から『進行方向はこちらメインストリート』を往くあなたに大きな声援を送ってくる。
 沿道に手を振るあなたに、箒で飛ぶ姿や、宙から落ちてくる姿、水上を走る電車で横に座る姿などを想起させながら。

 行かなくっちゃ。またあの顔たちに会いに。

【「吠えちゃだめ。この人はカオナシ族の新人さんで、まだ何にも知らないんだから」キキ】
【「見た目は巨大だけど、幻みたいに軽いんだね」『ペーパームーン』映画つながりの友情出演】

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