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東京雪日。

 一昨日、「明日は雪が降るでしょう」の予報は、口調も現実性も軽かったのに、蓋を開けた昨日の雪は重かった。

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 どしんと腰をおろした冬が、お尻を地に据えたままTOKYOを踏みつけた。公園という公園は雪国に迎合し、路は難易度の高いゲレンデに倣った。スニーカーは通気性と浸透性が過ぎるスキー靴と化し、溶け始めた雪はたゆたわない川に姿を変えた。

 北国の冬は寒さに厳しく、都市部の雪は都会人に厳しい。

「お客さん、電車が来ましたよ」
 お抱えの通勤電車が、遅れること○分でようやく迎えにやってくる。停車位置に止まり、扉開く。かじかんでばかりいると思っていた手は、思いのほかほんわか温かかった。

 雪は厳寒を頭脳に強いるが、実は雪の日は空想の寒さよりあたたかい。まるで夢のような雪の日は、夢が覚めるのに少し遅れて、組んだ足と手を崩しながら溶けていく。

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