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鎧か槍か。

「まるで映画を見ているようだったよ。垂れこめていた雨雲が蒸発したようにすこんと宙まで抜けた雨上がりの青空に、チヌークと呼ばれるタンデムローターの陸自の輸送ヘリコプターCH-47JA二機編隊が糸で引かれたように飛んでいる、その先陣の一機に、猛スピードで突っ込んできたミサイルみたいなものが飛行方向左側どてっ腹にめり込んだ。息を飲む間もなく機体は大空に赤黄の閃光を走らせ、片側の浮力を失くす。直後に爆発が起こり、機体を包み込んだかと思うと、たちまち地面に落ちていった。その日スタジオにいて、たまたま外に出ていたときに出くわしたのさ。
 スタジオの屋根は高い。おまけに屋根は左右から包み込むようにせり出していたため、起こったアクシデントの視野は狭められていたけれど、視界から消えた数秒後に墜落したことがわかった。地面に叩きつけられる轟音、追って火柱が上がり、黒煙が昇りはじめた」

 日本では起こり得ないと信じて疑わなかったことが、起ころうとしている。でなければ政府があれほどまでして専守防衛の鎧を捨てて、先制攻撃の敵基地攻撃能力増強という槍を持とうとはしないはずだ。
 国民には知らされない極秘事項というものは、いつの時代にもあった。今現在も進行中であることに疑いの余地はないのではないか。国民の知らないところで我々はじわりじわりと窮地に追い込まれているのかもしれない。

 各国間の緊張は、人類共通の敵が現れない限りほぐれることはないだろう。願わくば、均衡を保ちながら大事には至らない努力がずっと実を結びつづけてくれること。不穏な事態には至りませんように。



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