君は山が好きだったね。
名山という名山はぜんぶ登ったという君。鼻を高くしたところを見せたことがなかった君が、鼻にかけることなくさり気なく、さらっと自慢してみせた。
どんなに控えめでも、胸を張った君を初めて見た。そんな姿がうやうやしく、驚きで、吸い込んだ息をしばらく止めてた。
そんなこともあるんだね、と閉じた口がつぶやいた。
山に呼ばれていたのかい?
彼女ほおって電車に乗って、タクシー飛ばして登山口。
登って、撮って、下りて、ほら。山とたまった山の写真、高く積まれた写真の山を登っていくよに次々見せて。
「いい腕前」撮影テクに酔いしれ自画自賛もしてみせた。
もしかしたら、君は山で生まれたのじゃない?
夭折、君は生まれ故郷に帰ったのかもしれないね。
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