『ナウシカ』、『コナン』、『カリオストロの城』はジブリ作品なのか?

 中学生の頃、『ナウシカ』と『コナン』、『カリオストロの城』は宮崎駿が作ったけどジブリ制作作品ではないと話したら、友人に嘘だ、俺が持っているジブリの本の中に全部乗っているからジブリだと言われた。
 無論『ジブリ』は『ラピュタ』制作時に出来た会社だ。
しかし現在ではそれ以前の作品もジブリ作品ということにして売り物にされていることが多い。
例えば『ナウシカ』が映画館で再上映される際は「ジブリ作品を映画館で見よう」と言う趣旨の宣伝がされた。
一番すごいのは、絵コンテ集で宮崎駿や高畑勲が関わっている作品はジブリの絵コンテ集と言うことにして売っている。
考え方によればそっちの方がみんなにとって都合が良いのだろう。
ジブリという名前が良いものとして有名である以上、同じ作品でもジブリブランドにした方が多くの人に親しみを覚えてもらえるし、視聴してもらえる。売り上げにも関係するだろう。
厳密にはジブリ制作ではないというのは愚門なのかもしれない。

だがしかしジブリかジブリでないかと言うのはそこまで重要なのだろうか。
 私が『ナウシカ』、『コナン』、『カリオストロの城』などの作品をジブリでないと言えば、その友人はかなり感情的になって怒り狂った。
なぜかはわからない。
それらが面白い宮崎駿が作ったと言うことは同意しているのに、なぜそこまで怒り狂ったのだろか。
もしかしたら彼の中で「ジブリ」であるか、ないかが、とても重要なものなのかもしれない。
 ジブリ作品には素晴らしい作品がとても多い。それは監督らの才能、プロデュース体制、優秀なスタッフ陣などの相乗効果だろう。そのためジブリだから見る、ジブリ以外は見ないと言う判断基準が間違っているとは言えない。
ジブリ以外にも素晴らしいアニメはたくさんあるが、ジブリがブランドイメージになっている以上、宮崎駿と高畑勲が関わっていたら「ジブリ」と言ことにした方がみんなにとって都合が良いのだろう。


しかしジブリ作品は宮崎駿と高畑勲のみがジブリ作品を作っているわけではない。
 他のスタッフもジブリ作品を作っている。

 宮崎駿、高畑勲と並ぶジブリの顔、鈴木敏夫がプロデューサーとして関わった作品は無数にある。有名所では『イノセンス』などだ、
 「宮崎駿、高畑勲が制作に関わった作品はジブリ」と言うルールを採用すれば、彼らと同じくジブリの顔である鈴木敏夫が関わった作品もジブリだと言い切ることも可能だ。
『イノセンス』はジブリなのだろうか?


ジブリから独立した米林宏昌、西村義明らの作品はジブリの影響を強く受けている。2022年2月現在では彼らのオリジナル作品の数が少ないので何となく、ぱっと見ジブリっぽい。
現在はジブリ作品とはみなされていない。しかし「ジブリ作品」を名乗ったほうが全員にとって都合が良い場合はいつの間にかジブリ作品になるかもしれない。

 仮に数年後ジブリを米林宏昌と西村義明は相続(?)したとしよう。それから30年ぐらい「ジブリの新作」を作り続けたとしたら、その頃には現在スタジオポノック作品と呼ばれている作品は『ナウシカ』と同じく、ジブリ作品と呼ばれるだろう。

 同じことを庵野秀明が行えば、現在カラー作品と呼ばれている作品がジブリ作品と呼ばれることになるだろう。
 その世界線では『新劇場版エヴァ』はジブリ作品として扱われ、ジブリ解説本では『ナディア』も『テレビ版エヴァ』も『トップをねらえ』の解説やイラストも収録されているでしょう。
 そこで「『トップをねらえ』はジブリの本に載っていて庵野秀明監督作品だけど厳密にはジブリ制作作品じゃない。ガイナックス作品だ」と言えば、かつて私は言われたように嘘つき呼ばわりされるだろう。

ジブリで活躍した人たちが制作しているアニメは多い。最近で言えば安藤雅司の『鹿の王』、磯光雄、吉田健一『地球外少年少女』などだ。
 それらの作品も「ジブリ」だと言った方が視聴数は増えるだろう。

 しかし「『メアリと魔女の花』も『エヴァンゲリヲン』も『鹿の王』も『地球外少年少女』も『キングゲイナー』もジブリ参加スタッフが制作しているので「ジブリ」作品みたいなものだ」と言えば、それぞれの作り手たちはあまり良い思いをしないだろう。
 それぞれ誇りをも持って自分の大切な思いを載せて作品を作っているからだ。
 
 名作を見た時、次の作品も見たいと思う。しかし次の作品とはブランドではなく、作り手単位のものではないだろうか。
 アニメ『けものフレンズ』の次の作品は『ケムリクサ』。『メタルギアV』の次の作品は『DEATH STRANDING』だ。
『初代星のカービィ』の続編は同じく桜井政博がディレクターをした『星のカービィ夢の泉の物語』でその続編は『星のカービィスーパーデラックス』、その続編は『大乱闘スマッシュブラザーズ』だ。
しかし私は『星のカービィ鏡の大迷宮』や『星のカービィウルトラスーパーデラックス』と言った桜井政博がディレクターではないカービィシリーズの作品も大好きだ。そのためブランドの続編と同じように、同一の製作者が作ったというのもあくまで遊ぶかどうか判断する基準の一つだ。一番大切なのは自分がその作品を好きになるかならないかだ。

 初期平成仮面ライダーや初期アナザーガンダムは自分たちがオリジナルの制作者ではないということを自覚しつつ名作を作った。
 最近ではあんまり気にせず、等身大ヒーローが戦っているのは仮面ライダーで、ロボットアニメはガンダムという風になっている作品もあるが、それも誰かにとって名作であるならば何の問題もない。

この世界にはたくさんの名作が存在する。ブランドや作者にこだわらずいろんな作品を楽しんでいきたい。一方で製作者やブランドを参考に見る作品を選んだら、面白い作品を見つけやすいのも事実だ。
しかしまた一方で何のブランドもない、無名もしくは悪名高い製作者が作った作品にも名作があるだろう。
歯切れが悪いけど。面白い作品がたくさんあるのはしあわせなことだ。


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