武満 徹/巡り -イサム・ノグチの追憶に-

友人の彫刻家であるイサム・ノグチの死を悼んで書かれた作品。たえまなく旅を続けた彼の生涯を象徴するかの様に、フルートは多くの異なった場所を放浪するかのごとく巡リ、苦しみのある響きがノグチへの深い思いを感じさせる。

イサム・ノグチの代表作、"energy void"には、20世紀の激動の時代に東洋人と西洋人の混血児で、しかも非嫡出子という出生から国際的な彫刻家に大成した、複雑で空虚な思いからの霊気が漂う。

この"itinerant"では、"energy void"の霊感が武満のそれと交わり森羅万象の世界が表現される。それは「何もないところにこそ、力の源がある」と言わんが如く、2つの芸術の重なりを見るようだ。

作品中で使われる特殊奏法は、重音、1/4音、ホロートーン(微分音程で不安定なくぐもった音を出す奏法)、グリッサンド、ホイッスルトーン 、ハーモニクス、フラッター、トレモロ奏法などがある。

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