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いつのまにか、海を見ていた

君は言う 「甘い匂いがするね」
風を包んで飴玉一つ 君の口に放り込む
梢が 転がって
木立が 「よいせ!」と起き上がる
ざわめきが肩を組んで雲が鳴り
朝をつくろうとしている

二人は 少し 笑った

遠く 明けの カラスと漁師
ひびの入った ガランドウ
白黒はらわた倦怠感
通りを行けば 打ち上げられた
二月とコーラとヒヤシンス

もうすぐ 終わる 息の気配を
始まって しまった 潮の記憶を
二人は 少し
手と手に含む
砂時計のようにサラサラ落ちて

ゆがんだ二人の 影になる

君は言う 「まるで食べかけクッキーね」

ふきぬけようとする サヨナラが
錆びて空っぽに見えた自転車を倒し
鈍い音がこだまして

ふたつも揺れた

寄せては返す

甘い香りを

微かに残し