目押しと認識 ~目押しってなんだろう~
音ゲーでよく耳にするワード「目押し」と「認識力」ってなんだろう。
「曲のリズムに合わせて降ってくる音符をタイミングよく押す」営みがリズムゲームだけど、このとき、タイミングをどういった情報をもとに掴むかには主に2つの要素がある。
・曲に耳を傾け、リズム感をもとにタイミングを掴む(リズム押し)
・ノーツが判定線に近づいてくる様子を目で確認してタイミングを掴む(目押し)
実際のプレイで精度を高める上ではこのどちらかに偏るのではなく耳から得た情報と目から得た情報の両方から判断してタイミングを掴むとより正確に叩けるようになっていく!
(リズム押しについては別の記事で拍子と音符について説明していく予定でいます)
別に相反するものってわけじゃないのだ。
また、降ってくる譜面からリズムを読み取って曲を意識しながら叩くとしても、譜面がどのようなリズムを作っているのかを理解するためには、目からの情報と耳からの情報を一緒に処理(認識)しないといけない。
ここでは、目の使い方や目から入る情報が音ゲーのパフォーマンスにどう影響するか?を説明していきます。
おことわり
ここでは便宜上、プロセカやDeemoなど、ノーツが上から降ってくるタイプのゲームをメインターゲットにして解説するけど、例えば太鼓の達人やMuseDashのような横スクロールのゲームでも縦横を置き換えてあげれば同じ議論が通じるし、Cytusシリーズのような判定ライン側が動くゲームでも考え方は大きく変わらない。Cytusシリーズでの認識の考え方はCytusシリーズの仕様解説の際に添えたいと考えているので、まずは基礎編と思って読んでみてね。
いろんなゲームがあるなあ!
キーワード
・目押し ・ハイスピード ・レーンカバー(サドプラ)
・視点固定 ・目押し位置
1.視覚から何が分かるか
譜面を目で見ることで何が分かるだろう。いや、そりゃ目をつぶったら何もできないけども!!
例えばこんな配置を見ているとして…少なくとも以下の情報は目から直接入ってきていると言っていいと思う。
i.ノーツの位置、種類と、その順番。また、どこが同時であるか
ii.ノーツの間隔の大小(どことどこが近くて、どこに大きな隙間があって…)
iii.現時点での判定ラインからの距離(と、遠近のあるゲームにおいてはノーツの大きさ)
それぞれ書くとこんな感じ。(実際には1,2あたりのノーツはこの状態になる前に画面の上の方にいる段階で認知できるはずだけれど)
何も当たり前としてはいけない。これはもう哲学!?
ではこの目から入る情報から、我々音ゲーマー、何が判断できるんだろう。
i.ノーツの位置、種類と、その順番。また、どこが同時であるか
からは、どのノーツにどの指を当てると自然か(運指)が判断できる。この場合であれば、左右左右左右両手、とするのが最も自然だ。
ii.ノーツの間隔の大小
からは、どのようなリズムになっているかが判断できる。この場合であれば全部等間隔になっていて、それまで叩いてきた感覚も含めると24分音符であることもパッと判断できるかもしれない。
iii.現時点での判定ラインからの距離
からは、特定のノーツに対してどのタイミングで押したらよいかの詳細が分かる。この場合だったら目の前のノーツはもう押さないと遅い。もしここで曲に合ってないと思ったとしても、そこは音声オフセットや自分のリズム感を疑うしかないくらい明白だ。
こうやって図に表してみると、目から入る情報とその処理によって、手の動きを決定づけるために必要なほとんどの要素を得ているように見える。
i.運指
ii.リズム
iii.タップタイミングの詳細
2.目からの情報を安定してとらえ、活用するために
こういった情報の認知と処理は、譜面の難易度、密度が上がるほど難しくなっていくし、当然早く正確で安定しているほどいいわけだけど、そうなるためにはどんなことが必要なんだろう。
上で述べた情報を得るとき、見るべきものはノーツひとつひとつではないよね。ノーツとノーツの位置関係(左右の動きや縦方向の距離)を見るにも、判定ラインからの距離を見るにも、複数の物体が一度に視野に入っていないと不可能だ。
そして、認識に使える視野の範囲に譜面がすべて収まっているとしたら、本当は目を動かす必要なんて殆どないわけだ。
認識できるはずのものができていないとき、殆どの原因はたったひとつ。
「視点がふらついている」
目「どこいくつもりだったんだっけ…」
特定のノーツを追ってタップタイミングや位置を詳細に掴んだりしようとするとき、その一つのノーツを目で追ったり、判定ラインに視点を移したりすると、その前後で視点がふらつくことになるけど、この間奥の方から次に来るノーツは見えていないことになる。こういう瞬間があると、奥の譜面のノーツ順や間隔、判定ラインからの距離を認知して頭で処理する余裕が失われて、認識が崩れてしまう。
また、画面上にあまりにもノーツが密集しているとか、ノーツの速度が速すぎるような場合は、ぱっとひと目でノーツの叩くべき順番や互いの距離を判断できなかったりどれとどれが同時なのか分からなかったりして、一つ一つ視野を絞って確認したり、動くノーツを目で追ったりするような形で視点を動かす必要が出てくる。これも同じ理由で認識の崩れのもと。
こういったことを防ぐためには、プレイ中の目のホームポジションを決めて視点を固定し、視野を広く使って画面を俯瞰的に捉えることが必要になる。
まとめると
i.エイム合わせやタイミング把握のために特定のノーツを目で追ったり判定ラインに視線を移したりしているから
ii.パッと一見して内容を把握しきれない量、密度のノーツが画面上に表示されているから
iii.ノーツの速度が目で追わないと認知できないほど速いから
iに関しては、むやみに使う癖があるようならやめるように意識するしかない。固定した視点から正確にタップタイミングやタップ位置を掴むには慣れも必要だ。
ii、iiiについては、視点を固定する位置や設定が不適当であるといえる。ノーツが降ってくる速度(ハイスピード)や、ゲームによっては見る範囲を限定するためのレーンカバー(サドプラ)の設置を考えよう。(あとで説明します)
3.視点を固定する位置
たとえば、この画面のちょうど中央ぐらいに視点を固めるように決めたとして、実際にプレイしてみるとしよう。
でも実際には目はどうしても近づいてくる動体を追ってしまうもので、視点を固めたさらに奥から近づいてくるノーツがどうしても気になってしまうと思う。
もし視点を固めた位置にあるノーツがその都度しっかり認知できて、タップすべきタイミングまでにリズムや運指の判断が間に合うようなら、それより上のノーツを先に見ようとする必要はなくて、むしろ視点が動きそうになってしまうことによるデメリットのほうが大きくなることも多い。
つまり基本的にはノーツの降り始めの付近を常に見ておくのが安定だということになる。
もしノーツの降り始めからタップタイミングまでが長すぎて認識した内容を覚えていられないとか、逆に短すぎて判断がおいつかないとかいうことになると、それはハイスピードを設定できる場合は上げ下げすべきだ。
また、視点を固定する位置とタップ位置が遠すぎて指を当てにくい場合は、それを近づけるためにレーンカバーを配置して画面上部を隠したり、顔と画面との距離を見直すことで画面が視野に収まるようにしたりする必要がある。(Beatmania IIDXなど速度変化のあるアーケードゲームにおいては、低速に対応するため目を細めたり顔を近づけたりする手法がとられることもある)
「睨み」とかいうワードが普通にある音ゲ世界の存在…
4.ハイスピードの設定とレーンカバーの配置
譜面の認識はもちろん第一には練習あるのみだ。実力に合う範囲で様々な譜面に触れる中で自然とノーツを認知し、手の動きや刻むべきリズムを判断していけるようになる。
同時に、認識を安定させるために環境を設定できる場合は、やはり早めに最適な設定を見つけてしまいたいところだ。
ここでは、ハイスピードの設定とカバーの配置について触れていく。
●ハイスピード設定
まずは、ノーツの落下速度の設定。これをハイスピード略してハイスピと称しているのは古き良きIIDXで、多くのゲームでは単に「スピード」や「Speed」と表記してある設定になる。
これを、基本的にはノーツの降り始めに注目しながら画面全体を視野に入れたときに
・目と頭での処理が各ノーツに対して追いつく程度に遅く
・画面全体に一度に映る譜面の内容がぱっと見でおおよそ理解できる程度に速く(遅いと譜面が縦にぎゅうぎゅうに詰まるので)
設定するわけだ。
もちろん、実力の向上に伴い目と頭での処理は速くなっていくし、プレイする譜面の難易度が上がればさらに譜面を縦に引き伸ばしていかないと内容が把握しにくくなっていく。だから、やっていくうちに最初決めたハイスピより速いほうがよかったかな?と感じることもあるかもしれないし、それはごく自然なことなので気づいたときに再調整をかけていこう。
えーっとこれはどことどこが同時で…
●レーンカバー(またの名をサドプラ)の配置
ゲームによってはレーンカバーの配置も有効。特にDeemoではトッププレイヤーの殆どがレーンカバーをつけているし、プロセカでも稀につけているプレイヤーが居る。
これは例えば上の写真のように、画面の上部になんらかの目隠しを置く、というもの。これを使う目的を3つほど。
・画面に占める譜面の縦幅は当然プレイヤーが使用する端末ごとに決まってしまっているわけだけど、ノーツの降り始めに注目したときに判定ラインが遠すぎて押しにくい!という場合にはこうすることでその距離を縮めることができる。
・特にDeemoで多いけどノーツの起動がまっすぐじゃなかったり、ふりはじめがフェードインだったりすると、見づらくなってしまう。そこで、降り始めの部分を隠してその下から認識をすることで、プロセカなど他のゲームと同様の感覚でプレイすることができるようになるわけだ。筆者がDeemoでカバーをかける目的はここ。
・プロセカやDeemoなどのようにノーツの流れが遠近法により斜めになっているタイプのゲームでは、降り始めを見つめながら叩こうとするとどうしても降り始め付近で見たときのノーツの位置の真下付近を叩いてしまい、狙いを内側に外してしまいやすいので、これを防ぐ目的でカバーを使用するプレイヤーもいる。
アーケードゲームに視点を移すと、IIDXにはオプションで上からレーンカバー(SUDDEN+と呼ばれる、略してサドプラ)を表示できるし、チュウニズムにはフィールドウォールといって画面上に壁をはるオプションがあったりする。
ゲームとしてこういったオプションが提供されていることからも、こうしたものが認識を補助するツールとしてごく一般的なものであることが分かるよね。(ウォール使ってる人どれだけいるか知らないけど)
縛りプレイで目隠ししとるんちゃうんやで!!
5.目に入る情報とタップタイミングの関係を知る
次に、「1.視覚から何が分かるか」で説明した、「現時点での判定ラインからの距離」から「タップタイミングの詳細」を判断する方法、いわゆる「目押し」。
曲のBPMが緩やかに動く揺れ曲であるとか、譜面が曲から一部だけズレているとか、あとはゲームによってはフリックが押したタイミングより一瞬後で反応するせいで完璧を狙うなら気持ち早めに押したいとか、そういう自分のリズム感覚になかなか頼れないとき、役に立つのが目押し。
当然こうやって押すわけではない
ゲームのチュートリアルでもよく「ノーツが判定ラインに重なったタイミングでタップ!」とか教えてくれるけど、これにはちょっと注意を要するポイントが2点ほどある。
i.ノーツは視野の中心でなくても認知できる
目押しというと、判定ラインに視点を寄せてノーツが降ってくるところを全集中力で視覚から捉えるイメージを持ちがちだ。
でも実際、ノーツが存在することは視野の中心でなくても把握できる。判定位置に焦点を合わせて視野の上部から降りてくるノーツの位置と焦点との距離を把握することでタップタイミングの詳細がつかめるのだとしたら、逆にノーツのふりはじめに焦点をあわせたときの判定ラインの位置を視野内の「ある高さ」として練習で覚えておいて、視野の下部に降りていくノーツの位置と「ある高さ」との距離を把握することでタップタイミングの詳細をつかもうとしてもいいはずなわけだ。
勿論この「ある高さ」をしっかり掴むためには練習が要る。視点を同じ位置に固定して繰り返しプレイすれば徐々に安定してくるはずなので、判定調整も考えながら自分の目をゲームに合わせていこう。プロセカやDeemoのように遠近のついたゲームではノーツの見かけ上の大きさも良いヒントになるのでより掴みやすい。もちろん、この高さはゲームにもよるし、端末の大きさにもよるし、カバーを設置していればその高さにもよる。
極めれば見えずとも感じるようにさえなってくる…のか??
それから、視点を移動して図の左側の方法で目押ししたほうが確実な場合もある。これは例えば、目押ししたい配置の前後にノーツが詰まっておらず、視点の移動によってその瞬間の認識がブレても問題ない場合だ。結局「視覚から1つのノーツのタップタイミングを確実に捉える」というだけのことが目的である場合は判定ラインを見るほうが優れた方法だから、譜面に応じて柔軟に対応を考えてみよう。
極端な例だとメルトのラストは前後に視点を移すだけの余裕がある
ii.タップタイミングはノーツがラインに重なって見えた瞬間では遅い
これはリズムゲームに限った話ですらないけど、ゲームプレイには様々な遅延が存在する。「ラグい」とかよく言ったりする。例えばどんな遅延が?
・視覚の遅延(人間の視覚は約0.1秒前と言われる)
・入力の遅延(指が画面に接触、画面上を移動などしてからタッチパネルが反応するまでの時間)
・判定処理の遅延(タッチパネルが動作に反応してから判定の処理が起こるまでの時間)
・仕様上の遅延(タップタイミングでなく擦った後のタイミングで判定するフリックなど)
人体にも、端末にも、アプリにもそれぞれに起因する遅延がある。実際これらを足し合わせた分だけ「ラグい」わけだから、ノーツがラインに重なっているところが目で見えてたらそりゃもう当然遅いということになる。
絶対ちゃんと押したのに~
Deemoでは見た目上のタップタイミングが端末ごとの遅延差に影響されないよう調整させてくれる親切なオプションがあったりするけど、そうしたゲームはごく一部だ。ほとんどのゲームではこれらの遅延の影響を受けて正味の判定位置が画面上の判定ラインより前に寄っていて、それも経験でなんとなく掴んでいくしかない。とにかく、「ノーツが判定ラインに重なった瞬間にタップ」というチュートリアルを疑ってかかるべきなんだ。
とても個人的感覚の話になるけど、筆者はよくノーツが判定ラインに重なる「瞬間に」、というのを嘘としておいて、ノーツが判定ラインに重なる「までに」押す、という意識でタップタイミングをとらえようとしている。特に遠近のあるゲームではこれがハマることが多くて、同じように考えているプレイヤーがいないか少し気になっていたり。
6.まとめます
・目で譜面を認識し、リズムを理解したり指の運びを決めたりする技術は音ゲーの要であり、実力の大きな部分を占める。
・認識を安定させるには、スピードやカバーの有無とその高さ、目から画面までの距離などを自分に最適となるように設定し、視点位置を一定の場所に固定するとよい。
・いわゆる「目押し」の際にも視点の置き方はさまざまあり、状況に応じて使い分けられるとよい。また、ゲームプレイの中で起こる様々な遅延を理解した上で、プレイを重ねる中で目押しの位置を覚えていく必要がある。
おわりに
ふう。初記事として基礎編を選んだことに少しばかり後悔しそうなくらいの長話になっちゃった。お許しくださいな。
世の中には不思議な人もいるもので、こうした認識に最適な設定をガン無視した縛りプレイで完璧なリザルトを叩き出す動画があったりするよね。
誰とは言わないけど。
これを見て「どういうリズムしてんだか全くわかんないな~」と思うのが一般プレイヤーだろうし、こうしたところからも譜面を目で認識するってことがいかにパフォーマンスに響くかってこともよく分かるよね。
…それから、部屋を明るくして目を大切にしようね。
おしまい。
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