Gaming Oasis探索の旅路 -背負った罪過を詫びるは聖堂-

気取ったタイトルですが、内容としてはBEMANI PRO LEAGUE -SEASON 3- IIDXの振り返りとなります。
まだ最終結果すら出ていない段階ではありますが、今回は既にレギュラーステージでの敗退が確定してしまったチームGiGOのBPLS3での戦いを振り返っていこうと思います。
各選手がこうでした、というよりも、リーグ戦全体の流れに重点を置いた振り返りとなります。


チーム概要

-Get into the Gaming Oasis-
GiGO

BPLS2より参戦したチームです。
運営企業は株式会社GENDA GiGO Entertainment、かつてはSEGAの名でアミューズメント施設を運営しており、2022年頃よりGiGOという名称に変更となり現在に至ります。
ゲームセンターについては比較的全国津々浦々に幅広く展開している印象がありますね。
あと社長が美人さんです。

チームの所属選手については、全員がBPLS2から継続契約となっています。
かつての若きホープというポジションから、聖堂CORIVE(カリバー)をまさかのエースに大抜擢という采配から、既に見ていた方には衝撃だったのではないでしょうか。
そして、さらなる若手で伸びしろ抜群のNUCHIO(ぬちお)、歴が長くともプロの世界では新顔であったCYBERX(サイバーエックス)、LOOT(ルート)と、フレッシュなイメージがチームとしては固まっていた印象です。
爽やかさとは裏腹に、チーム全体の実力としては、他チームに対抗できるのかという懸念の声も多いチームではありますが、CORIVEの逆境に対する強さが度々窮地を救ってきました。
BPLS3においても、底力を期待されていたチームと言えるでしょう。

BPLS3におけるGiGO

これまでの試合をご覧になった方はかなりしっかりと実感されたかと思いますが、BPLS3では参戦する選手のレベルが前季よりもはるかに上がっている、とされていました。
そのことについては、シーズン開幕前、ドラフト候補が発表された時点で各方面から予測の声が上がっており、BPLS2所属していた全員が引き続き参加の意思を表明していたGiGOとしては、チーム編成の検討の段階から岐路に立たされていました。
BPLS2でこそ、レギュレーションを最大限に活用し、選手たちの底力で突き進むことが出来たものの、同じ手が今季も通用するだろうか?という点を、采配する側としては結論が出るまでに一度は考えているはずです。

加えて、前述のチーム編成には少なからず弱点もありました。
主に大将戦で採用される高難易度でハイコストとなる場所を、必然的にCORIVE、NUCHIOがメインで取り組むことになるという点。
大将戦は、基本的にはチームの中でエースポジションを担う選手が出場するケースが多いです。(単純にその方が多くのptを得られる期待が大きいため)
他チームのエースと対峙するケースを考慮すると、「純粋な地力勝負」では正直分が悪い勝負になる可能性が高いです。
もちろん本番では様々な要因で下馬評などいくらでも覆り得るのですが、端から分の悪い勝負を強いられるのはチームとしても戦う選手としても心苦しいものだと思います。

視聴側の思い等はいったん抜きにして、チームの今後のためというのもありますが、それ以上に選手たちに新たな場所で価値を見出してもらうためにも、メンバー再編という選択肢は大いにあり得たと思います。
ただ、それでもGiGOは現状の4人と共に戦い続ける道を選びました。
これもまた、立派な選択肢の1つに違いありません。
ただ、その選択肢を取るということは、必然的に4人にはさらに強化されるであろうチームを相手に勝利すべく、自分の殻を破るレベルの強化が求められることになります。
BPLS2からチームファンであった方の喜びも大きかったかもしれませんが、その裏で絶大な苦難に直面していたことは想像に難くありませんね。

試合における采配について

某チームの某アドバイザーの方が、「ドラフトで各チームメンバーが決まった後にレギュラーステージ全試合の組合せと譜面ジャンルは抽選で決定されている」旨を公表されています。
そこで、各試合の対戦カードに見る、GiGOの采配の意図を考察していきます。

試合オーダー一覧
ファーストステージ第1試合(vs APINA VRAMeS)
先鋒戦(☆8~☆10・SCRATCH):CYBERX
中堅戦(☆10・TREND):CORIVE
大将戦(☆11・CHORD):NUCHIO
ファーストステージ第5試合(vs TAITO STATION Tradz)
先鋒戦(☆8~☆10・SOF-LAN):LOOT
中堅戦(☆10・NOTES):CYBERX
大将戦(☆11・CHARGE):NUCHIO
ファーストステージ第9試合(vs SUPERNOVA Tohoku)
先鋒戦(☆8~☆10・NOTES):CUBERX
中堅戦(☆10・CHARGE):LOOT
大将戦(☆11・PEAK):NUCHIO
セカンドステージ第4試合(vs SUPERNOVA Tohoku)
先鋒戦(☆8~☆10・NOTES):CUBERX
中堅戦(☆11・SCRATCH):CORIVE
大将戦(☆12・PEAK):LOOT
セカンドステージ第8試合(vs TAITO STATION Tradz)
先鋒戦(☆8~☆10・TREND):LOOT
中堅戦(☆11・NOTES):CYBERX
大将戦(☆12・SOF-LAN):CORIVE
セカンドステージ第12試合(vs APINA VRAMeS)
先鋒戦(☆8~☆10・PEAK):NUCHIO
中堅戦(☆11・CHORD):CYBERX
大将戦(☆12・SCRATCH):CORIVE

ポイントとなるのは、終盤の2試合で大将戦・SOF-LANとSCRATCHが割り当たってしまった点でしょう。
ここはCORIVEを起用するのが最も勝率が高いため、必然的にこのオーダーになってしまったと思います。
ここで注目したいのは、NUCHIOの起用についてです。
もしセカンドステージの大将戦のテーマがここまで癖に傾倒していなければ、☆12での勝算が大きいNUCHIOを後半3戦に大将で配置する選択を取ることが出来たと思います。
さらにCORIVEを☆11のファースト大将メインで起用し、そこでの勝率を上げる方向に持っていくことも可能だったでしょう。
ただ、ここまで偏ったテーマ配置になるとその作戦は通用しなさそうです。
そこで、やむを得ず、といったネガティブな理由にはなってしまいますが、GiGOにとって勝算がより大きいファーストステージの大将にNUCHIOを起用せざるを得なかったのだ、というのが私の考えです。
個々で輝ける分野が明確な一方で、ジャンルに左右されてしまうというウィークポイントが見事に悪い方向に作用してしまったと言えます。
思えばこのテーマ抽選の時点で、既にGiGOにとっては向かい風が吹いていたのかもしれませんね。

各試合での立ち回りについて

いきなりの苦境

(おそらくは)不安いっぱいで臨んだ開幕戦は、いきなりの山場でした。
大将での出場となったNUCHIOの前に立ちはだかるのは、APINA VRAMeSの求道者と言う名のポスト大魔王、UCCHIE(うっちー)でした。
彼はBPLに参戦してからというもの、時を重ねるごとに成長を重ね、今では世界屈指の実力を誇るIIDXプレイヤーへと変貌を遂げています。
もちろんプロの世界ですから、負けじとNUCHIOも応戦したものの、残念ながら、その高い壁を超えるまでには至らず2敗してしまいました。
結果は3-9での敗北。
大将でポイントを取れなければ勝利につながらないとはいえ、先鋒・中堅のCYBERX・CORIVE両名についてもリードを取るべきだった他選曲でそれほど振るわなかったのはあまり良い結果とは言えなかったかもしれませんね。

悪夢へのカウントダウン?

開幕から手痛い黒星スタートとなりましたが、まだ彼らに悲しんでいる暇はありません。
特にNUCHIOはもう2戦大将で踏ん張る必要があります。
2戦目のTAITO STATION Tradz戦では、先鋒中堅でまたしてもリードを作ることが出来ずにドローの状態。
NUCHIOに2度目の重責がのしかかります。
対戦相手は自称技巧派、見た目武闘派の8S.(はちしゃく)、意外なところからの選曲に定評がある選手です。
相手の選曲からのスタートでしたが、最後の最後までもつれた接戦を、あろうことか最後のわずかな失点で落としてしまいました。
ここについても大きなターニングポイントの1つだったと言えそうです。
自選については安定して快勝することが出来ていたため、ここで勝利していれば試合としても白星を取ることが出来た局面です。
内容に関しても、数点差で競り負けるのは他のどんな負け方よりも精神衛生上悪いです。
払拭しきれない悔いが残り、消化不良が続くままの状況で次を迎えることになりました。

3度苦境に立たされて見えた絶望と言う景色

3戦目となるSUPERNOVA Tohoku戦でもNUCHIOは大将を務め、先鋒中堅についてはここもドロー。
もはや人間であることを放棄し羅針盤と化したNIKE.(にけ)の自選曲をLOOTが食うなど健闘も見られましたが、序盤でのリードは作れず大将にとっては穏やかでない展開が続きます。
NUCHIOの相手は、ダークホースとも呼ぶべき、鉄のように固い城塞を擁する46(しろう)。
NUCHIOの自選曲は終始安定したパフォーマンスで難なく3ptを獲得できたものの、次なる2曲目で、悲劇が起こります。
難所を抜けて、5点リードを作ったままアウトロへ突入し、悲願の初勝利をつかんだかに思われた次の瞬間、曲が遅くなったタイミングでまさかの失点。
そのまま逆転を許し、勝利を逃しました。
第2戦での敗戦もあり、絶対に同じ轍を踏んではいけない、という強い思いで臨んでいたに違いないこの局面で、魂が散ってしまいました。
その場に崩れ落ちるNUCHIOの姿には、著者自身も言葉を失ったのを鮮明に覚えています。
大将3連戦、というあまりにもヘビーな立場がプレッシャーとなりすぎたか、ここまでの試合でNUCHIOにとってはかなり苦い記憶を作ってしまいましたね。
また、他3名が大将の手前でリードを作るだけでもその後の流れが大きく変わっていた可能性もありますし、それだけにどうにももどかしさが先行してしまうファーストステージだったと言わざるを得ません。

重すぎた借金

続くセカンドステージでは、NUCHIOに代わって3名が、ファーストで重責を背負ってくれた分の恩を返さねばなりません。
しかしながら、4戦目のSUPERNOVA Tohoku戦は、前述の采配の点から、凌ぎが主たる戦略となるオーダーでした。
これ以上の逆境が果たしてどこにありましょう。
加えて、大将ではまたしても鉄の城塞46が、ファースト以上にめっぽう強いレギュレーションの元に立ちはだかります。
この試合で大役を買って出たのはLOOTでしたが、ストラテジーカードなども作用し、完全に不利な状況を作り出され、完膚なきまでに叩きのめされてしまいました。
いささか、「勝てるときに勝たなかったつけだ」と言わんばかりの苦くて苦しい敗北がGiGOの選手陣に厳しい現実を突きつけます。
この時点で、SUPERNOVA Tohokuが下位争いから脱却し、GiGOがポストシーズンへ進出するにはTAITO STATION Tradzに落ちてもらうしかなくなりました。

全てを賭けた意地

ここまで誤算続きのGiGOにここで過去最大の山場が訪れます。
TAITO STATION Tradzとの直接対決です。
さらに、状況的には圧倒的にGiGOが不利な状況です。
まずこの試合は敗北が許されず、また勝利してもTAITO STATION Tradzの戦況次第では敗退となる状況でした。
ここでついに、腕を鳴らしていた聖堂CORIVEが大将として登場しました。
前季以上に高い壁を壊さなければポストシーズンは夢に終わります。
そこで立ちはだかるのは、数々のあり得ない記録を樹立している破壊神KKM*でした。
この壁は高いどころではないですね。
この試合でもやはり先鋒・中堅はドローで進行し、来たる大将戦。
CORIVEが全身全霊を賭けて建てた聖堂が、ものの見事に破壊神を破壊して魅せました。
KKM*からポイントを奪うことに成功したのです。
結果として勝利とまではいきませんでしたが、試合としては引分で、望みをつなぐことが出来ました。
あまりにも大きい聖堂で見るものを魅了していったCORIVEが、そのままの勢いで打開してくれるかと思われました。

遅すぎた挽回

しかしながら、最終節のTAITO STATION Tradzが決定打となる勝利をおさめ、GiGOは3位に浮上することが不可能となりました。
ポストシーズン通過の希望がここで潰えます。
振り返ると、どこまでも悪い方向に噛み合ってしまった試合が多く、やるせないの一言に尽きますね。
それと同時に、あの場での失点がなければさらに勝点を伸ばせていた、という場面が非常に多かったのも印象的です。
全体を通して、リードを取ることが出来た場面がない、というのもウィークポイントとして浮き彫りになってしまった気がします。
一言で言うならば、正直「残念」という言葉が出てきてしまうシーズンでした。
まだ今後に放映を控えた試合もありますから、そこで今度こそ「これが望んだ通りのものだ」というのを見せていただきましょう。

チームの今後

チームとしては、ジャンルと立ち回り次第で十分に勝機を見出せるチームだと私は考えています。
ただ、昨今の実力のインフレっぷりからすると、「ジャンルと立ち回り次第」という接頭辞がついてしまう戦略自体に疑問を呈することも可能なわけですね。
実際に、運には左右されどほぼほぼ安定して勝てるであろう布陣を組めるチームも数多く存在する中で、博打頼みになりがちなチームが苦境に立たされるのはある意味自然の摂理とも言えます。
それでも我々は博打を制する自信がある、と胸を張って言えるか、あるいはそうではない幅広い勝ち筋を見出せるように研鑽する、という明確なビジョンがあればよいのですが・・・
なければ、あるいは・・・といったところかもしれません。

今回はチームGiGOを取り上げて記事を執筆しましたが、他チームについても随時記事を上げる予定ですので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

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