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東カレデートで仮氏が出来た話(中編)

マンションに着くとポストから溢れたちらしや郵便物が目に付いた。
部屋の前に着くと、ドアノブに紙袋が掛かっており先程と同様ちらしや郵便物が無造作に突っ込まれていた。
精「僕がなかなかポストチェックしないから、大家さんがある程度溜まったら届けてくれるんだよね〜。優しいよね!」
優しいとかではなく、きっと仕方なくやってくれているのだろう。

部屋に入ると、その予感は既にしていたが、かなり散らかっていた。
不潔ではないのだが、書類や本や先程の大家さんが掛けてくれたいくつもの紙袋が所狭しと散らばっている。
こんな家に自信満々で良く招待出来るなと、驚きを通り越して感心してしまう。
勿論「ちょっと良いシャンパン」なんて出て来ず、いきなりキスを迫る精神科医。
そこからはキスを迫る仮氏とそれをガードする馬鹿な女の取っ組み合いが暫く続き、最終的に私が根負けした。
そもそも男性は力が強いのだからこう言ったシーンで力付くと言うのは全く紳士的ではない。

そこから、「僕のを触って舐めて」と要求が始まり3割程度の仕事をしていると、
精「あっ…今ちょっと出ちゃったの分かった?♡」
と言われて私の中の何かがプチンと切れた。
と言うか、切れるタイミングを探していたのかもしれない。
お「もうやだ!今日はしたくない。するなら今度ちゃんと記念日っぽくして。(ぷいっ)」
精「ご、ごめん〜。僕が悪かったよ。今日は仲良く一緒に寝よう!」

そんな訳で私の思惑通り不発に終わった初夜であった。

精神科医の良い所がまだ紹介出来ていないのだが、敢えてあげるなら翌朝一緒に電車に乗った際にパーキンソン病のおじいさんに席を譲っていた事だ。ただ、それだけ。


精神科医が勤務先の最寄り駅で降りて、私はそのおじいさんの隣に座り10分位会話をした。
上野でバスに乗り換えて病院に行くそうだ。
10万円以上入った封筒を見える様ポシェットに入れていて
「ここにお金が入っているんだよ。前失くしちゃってね〜。」
と私に見せて来る。
「おじいさん!外でそうやってお金見せたら駄目!ちゃんとしまって!悪い人に取られちゃうから!」
と周りの人にも聞こえる様に注意した。
心配過ぎて、私も上野で降りて10㎝ずつゆっくり歩くおじいさんを改札まで見送った。
話が逸れたが、精神科医の事を思い出すと私はそのおじいさんを必ず思い出す。
むしろおじさんを思い出す。
お金失くさなかったかなぁ、無事にバスに乗れたかなぁ、誰か優しい人が手伝ってくれたかなぁ、病院まで一緒に行ってあげたら良かったかなぁ。
回想するだけで私の気持ちは明後日の方向に行く位なので、先に言ってしまうとこの仮氏とは3週間程で解約となった。

続きはまた今度。

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