司書資格 図書館情報技術論

序論

 現代に生きる私たちは、世界中の多様な情報のほとんどをSNSを通じて瞬時に知ることができる。そうした状況でも、「図書館」で情報探索する意義、そして価値が見出されている理由の一つに、著しい情報技術の進歩があげられる。図書館の活用促進及び利用円滑化に資する情報技術に着目し、現代の図書館のあり方を考える。

⑴ WebOPAC

 OPACは目録システムのことであり、近年はウェブ上で利用できるWebOPACとして、多数の図書館で導入されている。
 館外からでも著者名、出版社名、分類などの書誌事項をもとに資料を検索することが可能である。検索の際、複数の語をかけ合わせて検索ができるため、カード目録を使用していたころと比べ検索精度が向上した。
 また、現在の図書館システムは総合図書館システムと呼ばれており、貸出・返却システム等とも連携している。そのため、検索した資料の有無を即座に知ることができ、予約も簡単にできるようになっている。いまや利用の円滑化を図る上で欠かすことのできない技術の一つである。

⑵ 貸出・返却システム

 貸出・返却システムでは、利用カードと資料のバーコードを読み込むことにより、自動貸出を行っている。そのことにより、貸出期限を過ぎても返却がない時に、催促メールを発信することも可能になった。ただシステム化したことによる欠点もある。筆者は学校図書館に勤務しており、貸出期間は1週間である。しかしゴールデンウィーク等の長期休暇の際は、返却期限の延長の登録をし直す必要がある。

⑶ デジタルレファレンスサービス

 レファレンスとは、利用者が調べたいことや探している資料等の質問について、必要な資料・情報を案内するサービスで、図書館における情報(提供)の中心といえる。近年、インターネットの普及に伴い、来館しなくともメールやWebサイト上で質問することができるデジタルレファレンスサービスが広まってきた。メール等を活用することで、利用者が気軽に、開館時間に縛られることなく質問できるという利点、来館での質問よりも回答を得るまでに時間を要すが、じっくり時間をかけて調査され文書により明確な回答を得られることから、有用性が高いといえる。
 また、利用者からの質問が多い分野等の資料や情報は、パスファインダーとして公開されていることがある。このような間接的なレファレンスサービスにより、利用者が資料等を探しやすく、またサービスを提供する側(レファレンスライブラリアン)の業務の効率をあげることもできる。

⑷ 電子書籍

 デジタルデータ化された雑誌を電子ジャーナル、デジタルデータ化された書籍を電子書籍という。その多くがインターネット経由で利用されるもののため、オンライン書籍などとも呼ばれる。
 電子書籍の利点は多数あげられる。来館することなく、インターネットが使用可能な場所であれば、どこでも資料を閲覧できること、また閲覧可能な機器を1台持っているだけで、多数の資料を読むことができる。このことから、物理的な保管場所を確保する必要がなく、破損、汚損の心配もない。また印刷工程が要らないため、出版から利用までの時間、コストを大幅に削減できる。また、文字サイズを変更できるため、高齢者や視力の弱い人なども読みやすいが、モニターによる目の疲れには注意が必要である。

⑸ オンラインデータベース

 インターネットを経由して利用できるデータベースのことをいう。多くの場合、利用者はデータベースの提供業者と利用契約を結び、IDやパスワードを入力することで、自分のパソコンからデータベース上の情報を検索、閲覧することができる。筆者が勤務している学校図書館も提供業者と契約しているため、禁帯出である図鑑や資料を生徒が授業中や自宅からでも容易に検索し情報を入手でき、理解に役立てることができる。
 ただし利用契約は通常有料であるため、生徒一人のご家庭から徴収することになる。どこの学校でも取り入れることのできるシステムであるとは言い難い。

結論

  以上のように、図書館には様々な情報技術が導入され、利用しやすさは日々向上し続けている。今後も更なる発展、図書館の存在意義を知らしめていくことは想像に容易いことだろう。しかしその一方で、利用者がインターネット利用環境を持たなかったり、活用するための情報リテラシーが不足している人も少なくない。様々な資料の収集や保存、そしてそれら情報を発信している図書館を最大限活用し、その恩恵を存分に受け入れることができるよう、図書館員は新しくより優れた情報技術の適用を視野に入れつつ、生徒等への情報リテラシー教育を行うことも一つの役割として取り組む必要がある。

2023.04.26.

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