カラスヤサボウ:セルフライナーノーツ / 文学少女インセイン

文学少女インセイン_ジャケット

セルフライナーノーツ / 文学少女インセイン

このアルバムについて何か話してください、と言われると、様々な感情がごちゃっと出てきてしまい、うまく話せないことが多いです。力なく悲しい笑顔を浮かべるほかない、というのでしょうか。とにかく
愛も憎も湧いて出てくるような、矛盾した感情の発露がそこにある気がします。

今回は折角なので少しこのアルバムについて思っていることを、正直に認めてみようと思います。

 自分の代表曲と言われるような楽曲が多数入っている"文学少女インセイン"ですが、先述したとおりこのアルバムに抱いている個人的な感情は、消して明るいものではありません。

 このアルバムの発端になった楽曲"プロパガンダ"を制作した当時を思い出してみると、自分の無知や思い上がり、未熟さ、そして今だからわかる色々なことがあるように思います。寝る前、ふとこの作品を作る前後のことを思い出すと、枕に顔を埋めじたじたとしてしまうような感情に苛まれます。(いわゆる黒歴史、というような呼び方に近いのかもしれません。)

 あの当時、ボーカロイドの世界が持っていた大きなエネルギーのうねり、その熱気を気持ち悪く感じた肌感覚。そのうねりにうまく乗り切れなかった妬み。いろいろなものが"プロパガンダ"という楽曲に詰まっていると思います。技術的にはまだまだ未熟で、言っていることも世間知らずの青臭い印象なのですが、それと同じぐらいその当時自分が感じた肌感覚や熱といったものが、音を通じて真っ赤に現れるように感じられるようにも思います。

 プロパガンダを投稿して引退宣言と復活という、かっこ悪い一連の流れを経て自分の代表曲にもなった"文学少女インセイン"や"ダンスダンスデカダンス"が生まれたこと。そのアルバムがきっかけで小説の原案を担当させていただいたこと。全国流通アルバムを作らせていただいたこと。そして今の所属させていただいてるレーベルであるTOKYO LOGICに声をかけていただいたこと。様々な人に音楽を着てもらえるようになったこと。色々なことがここから始まったと考えると、作れたことに感謝しなくてはいけないと思います。その発端が怒りだったことは、生きていると何がどうなるかわからない、そんな人生の縮図のように感じます。

 自分自身がこのアルバムに持っている感情は決して会心の一枚、というものではないのですが、未熟で青臭いけど熱量のある、そんな一枚だと感じています。ぜひ、その当時の熱量の雰囲気を感じてもらえれば嬉しいです。

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