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演劇引力広島様「跡先」感想

まず初めに全体的な感想を。千秋楽を最前列で観劇しました。

実に人間らしい芝居だと思いました。そもそも自分にとっての「人間らしい」とは、個々の人間が自分自身の欲に正直であることです。
それぞれの役が調和していないからこそ、人間らしいイザコザ感が忠実に再現されていて、良くも悪くも演劇らしくないと感じました。本当にありそうな話で、リアリティが高いように思います。

次に個々の役者さんや他の効果について。

五十嵐彩菜さん/実里役
稽古見学をさせて頂いた時から五十嵐さんの目が好きだなと思ってた。表情管理が大きすぎることなく繊細で、末っ子なりの葛藤心が見えてとても良かった。

市原真優さん/希保役
縁の下の力持ちタイプ。安定した発声が凄い役者さんだと思った。全体への否定の根源な感じがした。仕事で忙しいのか家に居合わせないことが多かったから、手に入っている情報量が人一倍少なくて不安だったんだろうなあ。

上岡久美子さん/寿子役
本当に復帰したてなの?と思うくらいの力量。声が高く裏返る感じが癖になる。感情の爆発が伝わりやすい。「死んだらどうにもならんけぇね」がめっちゃ好き。

瀬来晴香さん/千歳役
情緒不安定。酒に溺れている感じの表現を初めて見た。不思議な抑揚があって掴みにくい。癖になるリズム感があってめっちゃ好き。

田口朋子さん/真紀子役
調和を一番望んでいるはずなのに、空回りしがち。本当にこういう人いそう。突き抜けた明るい雰囲気は舞台映えするなあと思った。

高山力造さん/哲大役
大黒柱感がある。頼りたい。実の親との噛み合わなさが悲しい。自分を殺して他人を尊重できる優しい人だと思った。

松尾敢太郎さん/達大役
臆病者だという印象。彼女に束縛されていて、依存性が高そう。妹への声が優しくてお兄ちゃん味を少し感じるところの表現に惚れた。

安井静江さん/悦子役
過去の記憶に執着している感じが凄く現実的。物持ちが良さそうで親切な雰囲気を感じた。一見我儘そうに見えて、我慢しているところが多そうだと思った。

岡本唯さん/恵麻役
自分だけが親族の繋がりではないことを自覚していて且つ少し傲慢なのが見ていて辛い。客観的に色々見てきて沢山思うところがあって、勇気を持って独白する姿がかっこよかった。

舞台装置
アステールの多目的スタジオは舞台の奥行きが広く天井が高い気がする。だからこそ、大きな舞台装置が映える印象がある。庭?にある木がめっちゃリアルでびっくり。小物も含めて、実際にありそうな家感がとても良かった。

音響
ピアノの単音!!あれは何だ!!全体的には引き算音響なんだけど、導入の音がシンプルで抉ってくる。音に敏感なので何故かそれだけで泣きそうだった。とても良かった。

照明
フェードインした時にわずかな違いだけど庭の木の方が先に照明がつくのが好き。白い照明だと夜な感じがして橙色だと夕方な感じがした。光量の調整が繊細で良かった。完全暗転の中でピアノの単音は鳥肌立つよ……。すごかった。

ひとまず以上!!また語りたいことがあったら語ります。ただの独り言みたいになっちゃった笑
素敵なお芝居でした。ありがとうございました!!


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