音の失敗例(1) 吸音材を塗っちゃった
とある日、出張で飛行機に乗りました。その搭乗待合での事。“以前より搭乗アナウンスが聞き取りにくいな”と思い天井を見上げました。どうやら天井のロックウール化粧吸音板がペイントされたようです(写真-a)。きっと飛行場の改修でもあったのでしょう。
写真-a 塗装後
本来のロックウール化粧吸音板は写真-bです。
写真-b 塗装前(※写真-aとは別の部位です)
ロックウールは多孔質材料で、材料の空隙を音波が通り抜ける時に抵抗でエネルギー変換(音響エネルギから熱エネルギへ)が生じて吸音されます。塗装により音波の通り道が塞がれるとその効果は薄れます(図-1参照)。
図-1 吸音材塗装による吸音性能低下の例
(参考文献:「音響材料の特性と選定」㈳日本建築学会)
塗装により天井の吸音効果が弱まった結果、待合空間の響きが長くなり、アナウンスの明瞭性が下がったのでしょう。せっかく見た目がキレイになっても、大事なアナウンスが聞き取りにくくなってしまったら元も子もないですね。
吸音材の塗装は原則行わないようにしましょう。
塗装せざるを得ない場合は吸音材メーカー推奨の塗料や塗装方法を確認するようにしてください。文献「音響技術 p.61, No.104/dec. 1998」によれば、ロックウール化粧吸音板はその種類によって塗装による吸音率の低下度合いが異なります。写真-aが元々どの製品であったか定かではありませんが、吸音材の塗装には注意が必要です。
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