形と音(1)音が集中する部屋
これまでの記事では、吸音材という「内装材」によって音環境をコントロールできるという話をしてきました。では、「形」で音環境はどう変わるでしょうか。
このシリーズでは形と音の不思議を紹介していきます。
フラードームの中はどんな音?
スイスのバーゼルからドイツに少し入った場所にある「ヴィトラキャンパス」には半球体のフラードームが展示されています。こちらはほぼ半球の空間です。
ドームの中では、解説員の方が説明をしてくださったのですが、とても聞き取りにくく、また、とても違和感のある声に聞こえていました。
音の集中
ドーム状の空間や丸い平面の空間は反射した音が球や円の中心部に集まってしまうので、違和感ある音に聞こえ、非常に喋りにくかったり聞き取りにくかったりという音環境となってしまいます。これは、音声コミュニケーションを阻害する「音響障害」と言えます。
楕円の焦点や曲面の中心付近など、球や正円でなくても同様の現象が起こります。
音は形に対して素直です。数学の授業のようですが、図形を描いてみれば一目瞭然ですね。このような反射音の動きを想像せずに、まん丸の会議室や講堂を作ってしまうと・・・。
「音の集中による音響障害」を軽減するには、話す人や聞く人のいる位置に音が集まるような形を作らないことが基本です。また、デザイン的にそのような面を残したい場合は、その面に凹凸をつけて反射音を散らす方法や、集中を起こしている曲面に吸音材を設置して反射音を減らす方法も考えられます。形に起因する音の違和感を完全に解消することは難しいのですが、凹凸面や吸音材を利用することでデザインの自由度も上がります。
形は音にとって障害にもなり得ますが、良い音を作ることもできます。そのような事例を別報でご紹介します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?