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マスク灼け校舎駅から二十分

 駅から離れた校舎は、自転車で駅から片道二十分かかる。通学で日焼けした学生達の中には、マスクをした頬や口元を灼け残した者がいる。

   駅   大竹銀河

   田園

玄関の昼の電灯雨の庭

田園は大地の臭気立ちこめる

ふかし芋胃にほどけゆく柔らかさ

白靴が先頭行くや筑波山

蟻の上親指重くのしかかる

バス停まる道に面して換気扇

空想の黙(もだ)ふさはしや山かがり

アパートの壁貫通す画鋲かな

雷電の雨土吹かす響きあり

金属と陶器触れあふ紅茶かな

   コウノトリ

球入れのやうな巣塔へコウノトリ

手ぬぐひの球の解けし桶の水

目の奥の白黒映画濡れてゐる

   ランチドリンクバー

冷房のトイレは寝室よりきれい

パセリどけフォークの先の貝柱

カフェラテの氷多くて零しけり

奢られて素直な聞き手夏帽子

店員の愚痴たれ流し空調機

麻のシャツ表口より厨房へ

マッチングアプリの二人涼みけり

   冷蔵庫

電球の卵のごとく冷えてをり

   親子喧嘩

葡萄酒を黒南風吹きぬ港町

マスク灼け校舎駅から二十分

百円の散らばる音やランドリー

側溝へ五十円玉沈みゆく

新郎の友の白靴白スーツ

冷蔵庫寝言の如く音立てて

折畳み傘で案内雨の街

軒先の親子喧嘩やさみだるる

運動会夕方の雨夢うつつ

眠りから覚めくしゃくしゃの眼かな

   四万十

ぼうふらや理科少年の顕微鏡

四万十の石を大きな素足かな

日の丸の手ぬぐひ広げ家の者

ずぶ濡れて草刈り人は雲の下

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