救えない右手とあのフレーズ
手を繋ぐ、髪を撫でる、キスをする、セックスをする。そうすることで勝手に分かり合った様な気になる。賢しい猿と大して変わらないような事を、僕等は十分に知恵を付けてから繰り返して、安心する。
「触れるだけじゃ、分かり合えないね」
「受け入れることは?」
「それは理解とは違う」
ソファに腰掛けると、彼女はじっとドライフラワーに目をやる。じゃあ僕は、
「どうすればいい?」
遠くに一軒家が見える窓に、彼女の姿は映らない。喉が渇く。グラスに反射する光が万華鏡みたいに視界に飛び込む。胃が軋み